東京や福岡などの百貨店で高額商品を買う中国・韓国人観光客が増えている。特に中国では経済発展に伴い富裕層が続々誕生。日本の高級感ある百貨店で買い物をすることが「セレブ」の流行になっているという。国内消費の不振にあえぐ日本の百貨店業界にとっては貴重な「上得意」。各店とも中国・韓国人観光客向けのサービスに本腰を入れ始めた。 (東京報道部・川合秀紀)

 東京・銀座。開店前の百貨店近くの大通りに、大型バスが次々に駐車し列をつくる。中国や韓国からの団体旅行客たちがにぎやかに降りてくる。新宿でも同じような光景が繰り広げられる。

 三越銀座店は2007年、中国人の免税手続き件数が前年比75%増で、国別で最も伸びた。高島屋新宿店でも、中国人は同80%増と伸びが顕著。ただ件数では韓国人が最も多く半数を占めた。

 「高級バッグや化粧品など数十万‐数百万円のまとめ買いをする人が増えた」と三越関係者。

 店側は接客対応を強化しており、三越は昨年、銀座と日本橋店で免税カウンターに中国語を話せる社員を配置。昨秋には、福岡店など5店のホームページを中国語、韓国語、英語対応にした。

 中国は現金の国外持ち出し制限があるため、現金なしで決済できる中国の銀行発行のクレジットカード機能付きキャッシュカード「銀聯(ぎんれん)カード」の利用が多い。三越は昨年9月から、福岡など5店で、伊勢丹は同11月から新宿本店で、それぞれ決済対応を始めた。

 日本百貨店協会は政府などの外国人観光客誘致キャンペーン「YOKOSO! JAPAN」に初参加。福岡三越や博多大丸など全国10社27店舗が共同PRや割り引き、記念品贈呈を行っている。

 国際観光振興機構(東京)によると、昨年来日した外国人は834万人。韓国と台湾、中国で約6割。中国が初めて米国を抜いた。中国発着で福岡市内の百貨店などを回る「買い物ツアー」を検討中の旅行会社もあるが、九州への外国人の入り込みは、全体の数%から10%程度とみられ、まだ力不足。

 同機構の薬丸裕・海外市場開拓部中国担当は「九州はいま、アジア客の消費を逃している。観光地だけでなく、若者向け物販店や商業施設のPRを強化すべきだ」と指摘する。

=2008/02/10付 西日本新聞朝刊=