社 説

ギョーザ事件と生協/食の安全を置き去りにした

 中国からの輸入ギョーザによる中毒事件で、一般家庭での健康被害をなぜ防げなかったのか。危険な食品が長期間出回った背景には、行政の連携不足や流通業者の無責任な対応がある。

 経過をたどると、有機溶剤が検出された昨年11月の生協側の対応がポイントだったのではないか。

 コープあいづ(福島県喜多方市)とみやぎ生協(仙台市)で扱った物から相次いで見つかったのに、付着場所を突き止めないまま販売し続けてしまった。

 この時にしっかり調べていれば、殺虫剤の混入を突き止められた可能性があるし、昨年末からの中毒被害を防ぐことが十分にできたろう。生協側の対応には極めて問題が多く、またも消費者の信頼を裏切る結果になった。

 今月5日、コープあいづで扱った「CO・OP手作り餃子」からメタミドホスとは異なる殺虫剤「ジクロルボス」が見つかった。事件発覚後、日本生活協同組合連合会が保管商品を再度調べて分かった。

 コープあいづの店には昨年11月10日、買った人から「油のようなにおいがきつい」という情報が寄せられた経緯がある。その際に保管された物を調べたら殺虫剤が検出されたわけだ。

 1カ月ほど前の昨年10月5日にはみやぎ生協の仕分け作業中に異臭と油のような段ボールの染みが確認され、一部の出荷を取りやめている。26日には「薬品のような味がした」という苦情も寄せられた。残っていたギョーザから強いにおいがしたため調べたが、原因は分からずじまいだった。

 その後の11月20日、コープあいづの物から有機溶剤として使われるトルエンやベンゼンを検出したことが日本生協連に報告されている。さらにみやぎ生協分からもトルエンなどが検出されたのに、生協連は連絡しなかった。消費者無視の理解しがたい対応だ。

 いずれも製造日は昨年6月3日。同じ日のギョーザの袋から有害物質が見つかったら、製造や包装、輸送に不審な点はないか徹底して調べるべきだった。分からないでは済まされない。

 同時に遅くともこの時点で公表して、流通ストップに踏み切る必要があったのではないか。トルエンやベンゼンは有害であり、袋の外側に付着していたとしても健康被害をもたらす可能性がある。それ自体で大きな問題のはずだ。

 東北の2生協の件は結局、「物流経路での何らかの外的要因」と片付けられたが、これでは何も分からないのと同じだ。どこで付着したのか突き止められないなら、出荷や販売を当面見合わせるべきだった。

 昨年発覚した北海道のミートホープの食肉偽装事件でも「CO・OP牛肉コロッケ」に偽装された肉が利用され、信用を落としたばかりだ。

 今回はさらに深刻に受け止めなければならない。本当に安全な物を届けるにはどうすべきか、扱う商品からチェック体制まで全面的に見直す必要がある。売ってしまっては手遅れだ。
2008年02月09日土曜日