今年に入って急浮上した鳥取県境港と韓国・江原道東海(トンヘ)、ロシア・ウラジオストクを結ぶ定期貨客船就航計画。境港市はじめ中海圏域四市などからなる訪問団が十二日から韓国を訪れ、運航を計画している海運会社に就航を働き掛ける。実現すれば本州の日本海側で唯一の海外定期貨客船航路となり、境港が環日本海交流の窓口になるチャンスだ。しかし、最終的な決定には至っておらず、計画に対しても「採算は厳しいのでは」と不安視する声が上がる。
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国際定期貨客船が着岸する予定の昭和北岸壁=境港市昭和町
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運航を計画しているのは韓国の海運会社・DBSクルーズフェリー。一万六千トン級、最大五百人を運べる貨客船を就航させ、東海とウラジオストク、境港と東海をそれぞれ往復し、境港には一週間に一度寄港する予定だ。
境港では、江原道束草(ソクチョ)、ロシア・トロイツァと新潟を結ぶ旅客航路計画が浮上したが、出資問題などで協議が難航した。そんな中で降ってわいた計画だけに、境港市の中村勝治市長は「願ってもないこと。境港が環日本海交流の拠点に近づく大きな一歩になる」と関係者の声を代弁する。
中海圏で働き掛け
DBS社は韓国政府に免許を申請中で、早ければ八月ごろにも運航が始まる。県も一月には青木茂出納長、平井伸治知事が相次いで訪韓し、江原道知事や東海市長と会談して連携を確認、DBS社に直接就航を働き掛けた。県は新年度予算に仮設の国際ターミナル建設費一億八千万円を計上する予定で、船は外港昭和北岸壁に着岸し、ターミナルでCIQ(税関、出入国管理、検疫)が行われることになる。
ただ「DBS社が最終的なゴーサインを出していない」(平井知事)ため、最終決定にはなお時間がかかりそうだという。
十二日からの訪韓団は、就航実現をDBS社に働き掛け、東海市などと連携を協議する。中村市長や境港商工会議所の堀田收会頭、鳥取県の門前浩司商工労働部長らに加え、安来市の島田二郎市長や松江、米子両市と四市の代表がそろう「初めての画期的なポートセールス」(中村市長)だ。
人や物どう集める
一方で、貨客船就航に期待を寄せながらも「長続きさせるのは難しい」と見る関係者も多い。DBS社は県に「当面黒字は見込んでいない」と伝えているが、航路持続には黒字化は必須条件。韓国からの人や物の受け入れに加え、境港から安定的に送り出す必要もあるが、「人や物を集めるのは難しい」というのだ。
境港と中国、韓国を結ぶ定期コンテナ船実現に奔走した関係者は「新しい貨物を開拓するのは難しく、コンテナ船に影響が出るのが心配」と指摘。また旅客についても「たとえ集められたとしても、(利用客減に悩む)アシアナ航空機に影響が出る可能性がある」という。
境港管理組合は「東海はソウルよりも近く、地理的な優位性からコストメリットも出てくるはず」と期待を寄せるが、就航実現、さらに航路維持には境港市や鳥取県、経済界などの団結した取り組みが不可欠であることは間違いない。