生鮮野菜の昨年の輸入量が68万9000トンと、前年に比べ25%減ったことが明らかになった。過去10年で最も少なく、下半期は30万トンを割り込む少なさだ。安全性への懸念から中国産が大幅に減ったことが要因。輸入依存度の高い業務・加工筋の調達は国産に向いている。定着させるには、野菜主産地JAの積極的な取り組みが欠かせない。輸入野菜の減少は当分続くとみられるだけに、いまを好機ととらえ、あらゆる機会を生かして実需との接触を図ろう。
輸入の生鮮野菜が70万トンを割り込んだのは1997年の57万トン以来だ。2005年には100万トンの大台を超していただけに、昨年の輸入量は急速に減少したといえる。理由は2つある。上半期は06年の5月に施行されたポジティブリストが影響した。輸入の6割を占める中国産が、わが国の残留農薬基準の強化によって大幅に輸入を減らした。加えて、輸入量の3分の1を占めるタマネギ相場が低迷したことも影響したといえる。
もう一つは、下半期に世界中に広がった中国製品全般に対する安全性への懸念が、わが国の生鮮野菜輸入にも波及したこと。中国産は02年に冷凍ホウレンソウの残留農薬問題が起きていただけに、消費者の買い控えはあっという間に広がった。輸入業者が、「中国というだけで拒否反応が出ている」というほど不信は根強い。それに加えて今回の冷凍ギョーザ中毒事件だ。「中国産野菜の輸入が年間50万〜60万トンの通常ペースまで戻るには時間がかかる」(輸入業者)とみていいだろう。
輸入野菜の利用者は業務・加工筋が圧倒的だ。家計消費で使われる輸入野菜は2%にすぎないが、業務・加工は全体の3割以上が輸入で占められている。農水省はシェアを奪回しようと、今年度からタマネギやキャベツなど品目を絞り込んで9つのモデル産地を設置。業務・加工需要に向く品種の選定や作型、コスト削減策などの生産実証に取り組んでいる。また、農政局ごとに実需者との現地交流会を行い、相互の足掛かりをつけることも進めている。産地はあらゆる機会をとらえて、業務・加工筋が求める野菜は何かを探ってみよう。
静岡県の大型JAでは、20年近く続く野菜の販売金額の減少に歯止めをかけようと、昨年から業務・加工業者と契約的な取引を始めた。職員が農家一戸一戸を回り、単位収量や生産コスト、収入などをきめ細かく説明。納得した農家に栽培をお願いしたという。1年目のまずまずの成果を見たこともあって、今年は契約数量が倍増した。実需との出合いは中間業者を通してだが、的確な対応が評価されたのだろう。他の実需との取引にもつながっている。果敢な取り組みができたのはJA役職員の危機感だ。業務・加工需要の取り込みは、ピンチをチャンスに変える絶好の材料。意欲的に取り組みたい。