正直ね、けっこう書こうと思ってるネタはたまってるんですよ。画像もサーバーにアップしてあるくらいだしね。でもね、この際時系列的なことは無視して、あえて「毒」を吐かせてもらいます。
「ほ〜ら、また始まったよ」という声も聴こえそうですが、これは悪口のつもりで書く気はありません。あくまで(僕側から見た)事実のレポートのつもりだと思ってくれるとありがたいのだけどね。
さてみなさん、次の言葉からどんなイメージを持ちますか?
“業界(人)”
…、業界、ギョーカイ…。
なんか華やかそう?
金持ってそう?
モテそう?
ちやほやされそう?
クリエイティブでカッコ良さそう?……。
うーん、かつてそのど真ん中を通って、現在は傍流から俯瞰してみるとけしてこれらのことはすべてが当てはまるとは思えない。確かにそういう人もいることはいる。これは否定しない。でも、他の業種の人と同様に苦労することはあるわけだし、けして楽な商売でもないし、よくも悪くも誤解されやすいというのもある。何しろ、昔レコード会社勤務というだけでマンション借りる時の査定に落とされたことがあったもの(笑)。笑っちゃうでしょ?
僕が気になるのは、他の分野の人がよくも悪くもこの分野の人間や企業に注目する時の目の色だ。まぁ確かに一見派手な部分があるから、アーティストやタレントと直接コンタクトが取れたり、ギョーカイのキーマン的な人と知り合えたことによって自分のステータスが上がったような錯覚に陥るというのもわからなくない。今回は僕が出会ったそんなタイプの人のお話です。
仕事で知り合った彼(だと、話が書きにくいので、仮に“田西さん”とご紹介しておこう)は、それまでもいくつかの中堅どころのプロダクションと折衝したり、また新たな営業先として大手レコード会社やコンテンツ系、エンタメソフト系への営業攻略を仕掛けている人物だった。
年齢も比較的近かった僕と“田西さん”はすぐに意気投合(した思っていたが、それは思い違いだったかも知れない:笑)、色々なアイディアを出し合うようになった(と思っていたが、それは思い違いだったかも知れない:笑)。
付き合う中で“田西さん”の色々な部分が見えてくるのだが、一番大きな点はリベラリストを気取りながらも権威主義者だということ、親分肌風に見えながら面倒見はまったくよくないこと、そしてよくも悪くも負けず嫌いだということ、さらに地味に酒癖が悪いこと(笑)…。まぁ、そんな人はいくらでもいるだろうけどさ。
それにしてもおかしかったのが、プロダクションの連中とかコンテンツ会社の連中とかは、確かに言わば“田西さん”に取っては“お得意様”なわけだど、人間ここまで卑屈になれるかね?というくらいのもはや“犬”状態(笑)。その逆で、出入りの業者に対する高圧的な姿勢のコントラストが面白過ぎたな。
さて、そんな“田西さん”は自分のことを「俺はギョーカイに精通している!」「顔が利く!」と思い込んでいた。いや、少なくとも僕と出会うまでは(笑)。
正直、“田西さん”みたいに卑屈になる必要なんかないんだよね。そのくせね、ライブとかに招待されたりすることがあるじゃない?そうすると、始まる前から呑み出しちゃって、終演後のアーティスト挨拶時にはもう酩酊状態(笑)。いや、これは“田西さん”絡みの招待ならまだしも、自分の同伴者としてなら絶対お断りだね。僕も懲りて、それっきり招待を頂いても誘わないことにしている(笑)。
ちょっと話がそれたけど、“田西さん”の中では僕自身が自分以上にギョーカイに顔が利く(そりゃそうだよ:笑)ことが段々と面白くなくなってきた気配が見え隠れするようになったのね。でもさ、逆に僕だって彼がこれまで生きて来た世界のこととに口出しもしないし、逆に勉強させてもらいたいような部分さえもあるのにさ、どうにも“田西さん”ってばそういう部分が希薄なんだよね。
けっこうギョーカイが特殊ってわけじゃないけど、ある意味正攻法や普通のロジックが成立しない部分ってあったりするわけじゃない(なんか嫌らしいな、この言い方。他の業種だってそういうとこは多分にあるだろうし)。そういう部分を逆にロジックを用いて説明してあげると、「鮭さんは音楽業界にいたのに、なんでこんなこともできないの?」と切り返してくるわけよ。だから、そこが難しい部分なんだって何回言えばわかるんでしょうね?わかんないんだろうなぁ…。
で、極めつけの話。
僕は自分の中で認めた人間しかのれんをくぐることを許していない隠れ家的な店がある。実はここに“田西さん”も含めて接待がらみで行ったのよ。相変わらず大将は美味い魚をさばいてくれ、含蓄のある話をしてくれ、お得意の和歌を即興で詠んでもくれた。“田西さん”も奥様の名前を織り込んだ歌を詠んでもらってご機嫌だった。みんながみんなその店のことを気に入ってくれたと思った、その時は……。
「鮭さん、昼飯一緒にどうですか?」と“田西さん”の方から誘って来たのはそれからしばらく経ってからだったと思う。僕は快くその誘いに応じると、「寿司に行こうと思うんですけど、どうです?」と“田西さん”。僕は「おお、昼からいいですねぇ(笑)。お供しましょう!」ということに相成った。
さて、時刻は午後1時過ぎだったため店の中は僕らだけ。なんかやたらと敷居が高そうな雰囲気が…。
来る道すがら“田西さん”が言うには「昔いた会社の接待で夜によく使ったんですよ。一人あたり¥3万とか¥5万とかしましたけど(笑)」。僕は「(びくっとしながら、それってバブルの頃の話っすよね?(苦笑)」。「まぁ、そんなもんです(笑)」と“田西さん”。
てなわけで、やっぱりランチ寿司にしてはなんか高級感漂い過ぎだし、しかも夜の部同様で値段に関する表示が店内に全然ない!でもまぁ、ランチだしなぁと思っていたら、「“田西さん”、お任せでいいの?」「あ、よろしく」ときたもんだ。まぁ、初めてのお店では慣れた人か店員の言うことを聞いてれば間違いがないとは思うんだけどね。
で、肝心の寿司だけど、確かに美味かった!“田西さん”いわく「大将はネタもさることながらシャリにこだわってる。シャリをほめると喜ぶんですよ」とのこと。しかしさぁ、自分ばっかり大将と話し込んでて、僕を彼に紹介してくれないってのはどういう了見なんだ?、とその時思った。
腹の方も満たし、あがりを頂いてさてお愛想ということになった時、僕は値段を聞いて腰を抜かしそうになった。
一人前:¥2100
……ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!
そりゃぁさ、今食った寿司は美味かったし、値段相応かといえばもしかするとそれ以上かも知れないよ。でもさ、悪いけど「聞いてないよ〜!」の世界。僕らのランチなんて¥1000越えたらちょっと今日は贅沢しちゃったなぁという意識なわけよ。それが、¥2100ってどういうことよ?だったら“田西さん”、あんた最初誘う時に「ランチでもちょっと値段が張るんですけどね」とかひとこと言うべきだろうが!僕はあんたみたいな高給取りとはわけが違うんだし。おごってくれと言うのは筋違いだと思うけど、なんでそういう肝心なことを言わずに、人を屋根に上げて梯子をはずすようなマネをするんだろうか。
誤解しないで欲しいのだが、僕は¥2100を払うのが嫌だったと言ってるのではない。「普段のランチより値が張りますけどいいですか?」という情報をあえて隠蔽した“田西さん”が許せないだけだ。おそらく先日の店での僕の仕切りが、彼には明らかに嫉妬の対象になったのだろう(何が、どこがというのはまるで想像ができないのだけど)。だから、この寿司屋で「俺だってこれくらいの店は知ってるんだ!」というリベンジを仕掛けて来たというのが僕の推測だ。
僕は昼飯1回に想定外の出費をしたことよりも、自分が仕事で絡む人間の器の小ささにたまらない悲しさを覚えてしまったことを覚えている。と、同時に人間どこでどんな風に恨みや妬み嫉みを買うかなんてわかったもんじゃないなと思う。
長渕剛の曲の歌詞でこんな一節がある。
あなたのようになりたいと思うのでなく、あなたのようになればいいだけだ
恨みや妬み嫉み、そこからは何も生まれないというのになぁ……。