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バイオ燃料生産目的の土地開墾で温暖化が加速、研究発表

  • 2008年02月08日 22:10 発信地:ワシントンD.C./米国
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インドネシア・北スマトラ(North Smatra)州で収穫された、ヤシ油の原料となるヤシの実(2007年8月30日撮影)。(c)AFP

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【2月8日 AFP】バイオ燃料生産目的での土地開墾は温室効果ガスの大量排出につながり、地球温暖化を加速するとの研究が8日の科学誌サイエンス(Science)に発表される。

■開墾により大量のCO2が排出

 熱帯雨林、草原、湿地などを開墾することで排出されるCO2の量は、バイオ燃料を使うことで削減されるCO2総量をはるかに上回る。

 バイオ燃料の原料となるトウモロコシ、サトウキビ、大豆などを栽培するために新たに土地を開墾した場合、化石燃料をバイオ燃料に代替することで削減されるCO2排出量の17-420倍のCO2が大気中に排出される。つまり、新たに「バイオ燃料由来CO2債務」を抱えることになるのだ。

 炭素は地中のほか、寿命を終えた樹木や植物にも蓄えられており、CO2として大気中に放出されている。土地の開墾は、大気中へのCO2排出量増加につながる。この増加分を、開墾した土地で生産した原料を用いたバイオ燃料で相殺するには、数年、場合によっては数百年かかる。

 研究チームがインドネシアでヤシ油生産のため開墾された湿地を調査したところ、開墾により生じた「バイオ燃料由来CO2債務」を返済するのに423年を要することがわかった。

■居住環境の破壊にもつながる

 研究チームのひとり、民間環境保護団体「ネイチャー・コンサーバンシー(Nature Conservancy)」創始者のJoe Fargione氏は「地球温暖化を緩和する上で、バイオ燃料生産目的で土地を開墾するのはまったく意味がない」と語る。

 同氏は「現在使用されているバイオ燃料はすべて、直接的または間接的に居住環境を破壊している。現在60億人分の食糧を生産している世界中の農業従事者が、さらに食糧由来のバイオ燃料生産を行うには、さらなる農地が必要になる」として、住環境の問題にも言及している。

■CO2隔離を促すインセンティブが必要

 共同研究者のミネソタ大学(University of Minnesota)のステファン・ポロスキー(Stephen Polasky)教授(応用経済学)は、「問題は(CO2の管理を促す)適切なインセンティブがないことだ。土地所有者は、ヤシ油などの生産では報酬を得られるが、CO2を管理しても何も得られない」と説明する。そうした状況が過度の開墾、ひいてはCO2排出量の大幅増につながる可能性があるのだという。

 CO2排出量を減らし環境破壊を遅らせるためには、CO2隔離にインセンティブを、あるいはCO2排出に罰則を設けることが必要だとポロスキー教授は主張する。

 また研究チームは、米国におけるトウモロコシ由来のエタノールの需要急増がブラジルの熱帯雨林の破壊を加速させていると指摘。需要に応えるため米国のトウモロコシ農家が大豆との輪作を止めたため、ブラジルの農家が大豆需要に応えることを余儀なくされ、アマゾンの森林破壊を助長しているというのだ。

 一方で研究チームは、自然の生態系に影響を及ぼさず、地球温暖化を加速させないバイオ燃料の存在も指摘。バイオマス廃棄物や廃材木を原料とするバイオマス燃料こそ、環境負荷を軽減しうる、科学者が開発を目指すべき燃料だとまとめている。(c)AFP/Jean-Louis Santini

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