|
現在位置:asahi.com>社説 社説2008年02月09日(土曜日)付 道路と自治体―分権の視点はどこに「年度内に関連法案を成立させることを強く求める」。道路財源をめぐって知事や市町村長、地方議会の議長らでつくる全国組織がきのう、東京で緊急集会を開き、こんな決議を採択した。 ガソリンにかかる暫定税率を現行通りに維持し、道路建設のための財源をとにかく確保してもらいたい。要求はそういうことだ。 民主党が言うように暫定税率を廃止すれば、地方自治体に分配される道路財源は1.6兆円も減ってしまう。新しい道路の建設はおろか、すでにある道路の補修や借金返済もままならなくなる。そんな暴挙は許せない、というわけだ。 知事や市町村長らには、ただでさえ苦しい地方の財政がさらに追い詰められるという危機感が強いのだろう。その思いは理解できる。 だが、だからといって、政府・与党の方針をそのままなぞるかのように、「道路」「道路」と声をあげるのはいかがなものか。分権という大事な視点がなおざりにされてはいないか。 歴代の首相は口をそろえて「分権推進」を強調してきた。小泉元首相の「三位一体」改革の掛け声はその代表例だ。なのに、中央官庁は権限をなかなか手放そうとしない。財源移譲となればなおさらだ。地方の財政は細るばかりというのが首長らの実感だろう。 その結果、知事や地方議員らはことあるごとに上京し、中央官庁や与党を陳情に歩かねばならない構図が続いてきた。 そんな状況を変えたい。権限と財源を自治体に移し、限られた予算をどう使うか、もっと住民に近いところで決めるべきだ。それが分権の考え方である。 道路整備についても同じはずだ。地域が真に必要とする道路はどれなのか。福祉や教育、医療などの行政需要と比べ、どの程度の予算を道路に振り向けるのが適当なのか。自治体の長や議会の判断で決められるようにしてこそ、効率的で無駄のない使い方ができるようになる。 そう考えれば、自治体側が訴えるべきことは明らかだろう。中央が握っているいまの道路財源を大胆に地方へ移す。そして、道路にしか使えないという特定財源の仕組みを廃止し、何にでも使える一般財源にすることだ。 10年で59兆円もの巨費を道路に投入する政府の計画が妥当なのかどうか、地域住民の視点から問い直すのだ。 暫定税率にしても、予算の総枠を減らしたくない気持ちは分かる。だが、過疎地などでは日常生活で車に頼らざるを得ない住民が多い。高いガソリン代の負担がのしかかる。道路だけでなく多様な使い方ができて初めて、高税率への理解が得られる面もあるだろう。 国会の審議や修正をめぐる与野党の駆け引きはこれから本格化する。知事や市町村長には、政府・与党の応援団に利用されるばかりではなく、分権の視点からもっと骨太の主張をしてもらいたい。 君が代判決―都教委は目を覚ませ卒業式の君が代斉唱で起立しなかったからといって、定年退職した都立高校の教職員らの再雇用を拒むのは、裁量を逸脱、乱用したもので違法だ。東京地裁がこう判断し、13人に計2700万円の賠償を支払うよう東京都に命じた。 東京都では国旗・国歌への強制ぶりが際立ち、抵抗する教職員が次々に処分されている。定年を控えた教職員に対しては再雇用をしなかった。こうした処分に対する訴訟も相次ぎ、今回の判決はそのひとつだ。 国歌斉唱で起立しなかったことは、ほかの教職員や来賓には不快かもしれないが、積極的に式典を妨害するものではなく、再雇用を拒否するほどのものか疑問だ。これが判決の論理である。 私たちはこれまで社説で、「処分をしてまで国歌や国旗を強制するのは行き過ぎだ」と主張してきた。様々な歴史を背負っている日の丸や君が代を国旗・国歌として定着させるには、自然なかたちで進めるのが望ましいと考えるからだ。 今回の判決は都教委の強制ぶりを戒めたもので、評価したい。 再雇用拒否の当否が争われた裁判では、東京地裁の別の裁判長が昨年、都教委の主張を認めた判決を出している。「一部の教職員が起立しないと式典での指導効果が減る」との理由だが、再雇用を拒むほどのことではないという今回の判決の方が常識にかなっている。 今回の裁判でもう一つの論点は、起立させる校長の職務命令は、思想・良心の自由を保障した憲法に違反するかどうかだった。判決は「職務命令は原告らに特定の思想を持つことを強制したり、禁じたりしていない」として合憲とした。 この点については、東京地裁の別の裁判長が06年、都教委の通達や指導を違憲と判断した。その当否は別として、裁判官によっても分かれているほど判断が難しい問題を、教育の場で一方的に押しつけるのは好ましくない。 今回の判決を機に、都教委には改めて再考を求めたい。 都教委の強硬姿勢が際立ったのは03年、入学式や卒業式での国旗掲揚や国歌斉唱のやり方を細かく示す通達を出してからだ。この通達のあと、延べ400人近い教職員を戒告や減給、停職の懲戒処分にした。再雇用を拒否された人は、今回の原告を含めて約40人にのぼる。 教職員は君が代斉唱の時に、踏み絵を迫られる。立って歌っているかどうかを確認するため、校長だけでなく、都教委の職員が目を光らせる。 こんな光景が毎年繰り返された結果、残ったのは、ぎすぎすした息苦しい雰囲気である。子どもたちの門出を祝い、新しい子どもたちを迎える場としては、およそふさわしくない。 あまりに行き過ぎた介入は教育そのものを壊してしまう。今年も卒業式や入学式の季節が近づいているだけに、都教委にはそろそろ目を覚ましてもらいたい。 PR情報 |
ここから広告です 広告終わり どらく
一覧企画特集
朝日新聞社から |