2007年12月
2007年12月21日
マリーミーの住む地域では、青春ソー・ロングは地球と同じ明け方ぐらいに終わり、
マリーミーはそのまま眠れず朝を迎えた。テレビは大人たちが侃々諤々の討論番組を映していた。
毎月の議論と同じように「イルカ星人の文明を乱すものだ!」と批判する保守派と、
「これから新しい世界が始まるんだよ!頭が固いじじいは死ね」の革新派の二つの意見しかなかった。
そのテレビを片耳で聞きながら、ネットの巨大掲示板を流し読みしていた。
ニュー速ではスレがパート1020まで立てられていた。軍事板では青春ソー・ロングの放送だけから地球の軍事力の推論が始まり、
食べ物板ではハンバーガーを作り始める人々が続出した。
株式板では宇宙産業と音楽産業の株価が暴騰するだろうという意見とその売り煽りの意見に別れた。
同性愛板では藤田の人気が上がる一方、既女板ではこんんあ男とは結婚できないと最低だった。
独男板では勝手に優子を想像し、同人板の職人が想像図を描き、VIPPERが囃し立てた。
メンヘル板では今日死ぬ宣言をしていた住人が「次の放送まで生きようと思った」と発していた。
どの板のどのスレも流れるような書き込みの中、
474 名無しさん@七周年 New! 2007/01/17(日) 16:42:46 ID:oqQBYejv0 1
この早ささなら言える
私もクラスのイモオのことが好き
という書き込みがマリーミーの目に止まった。その書き込みは本当にスレの流れの速さに流れてしまって、
他の誰からもスルーされていたけど、マリーミーは胸がとくんとして、何度も(私もクラスのイモオのことが好き)と口に出して呟いた。
ふと、イモオの部分を同じクラスの男子、ラッシェンに変えて(私もクラスのラッシェンのことが好き)と言ってみた。
胸がどきんと鳴って、心臓が止まるかと思った。ごくんと音を立ててつばを飲み込んだ。
それから急にそわそわしてしまって、ラッシェンのことを考えまいとして頭を振ったり、
目を固く閉じて頭を抱えたりした。でもラッシェンのことが気になってしかたがなく、自分の頭がおかしくなってしまったのではないかと思った。
そんな悶々とした状態の中、外の空はどんどん白んでゆき、雀が鳴き始め、朝食の時間になった。
父も母も昨日の放送は少しは聞いているはずだった。母は黙ってアンチョビサンドを切っていた。
父はいつもは新聞を読んでいるのだが、今日は気まずそうにコーヒーをすすっていた。
最後に小学生の弟が起きてきて、「昨日宇宙人はどんなはなしをしたの!?」と父に真っ先に問いかけた。
父は「…食べ物とか、生活の話だよ」というのが精一杯だった。母も私も黙っているしかなかった。
「地球人はどんな食べ物をたべてるの!?」「なんか、パンに、ハンバーグと野菜を挟んだものみたいだぞ」
「なにそれ」と言いつつ弟はテレビをつけようとしたが、父が「テレビらめぇ」と思わず大声を出した。
弟はびくっとして母の方を見た。母は「はやくごはんたべて学校へ行きなさい」と言うだけだった。
弟だけハイテンションの中、父と母と私はアンチョビサンドを食べた。でも私は食欲がなくて1/3も食べられなかった。
静かな食事の最中、突然「愛し合ってるかぁーい!」と言う叫び声が外から聞こえてきた。
隣のお兄ちゃんの声だ。隣のお兄ちゃんは二浪中だった。勉強のしすぎ上に昨日の放送がトリガーになって頭がおかしくなったんだと思った。
隣の家で誰かが階段を駆け上がる音がして、おばさんの「止めなさい、止めて、お願い」と泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
それでもお兄ちゃんが「愛し合ってるかぁーい!」と叫ぶと、今度は遠くから女性の声で「私も愛されたいー!」との叫びが聞こえた。
マリーミーはそのまま眠れず朝を迎えた。テレビは大人たちが侃々諤々の討論番組を映していた。
毎月の議論と同じように「イルカ星人の文明を乱すものだ!」と批判する保守派と、
「これから新しい世界が始まるんだよ!頭が固いじじいは死ね」の革新派の二つの意見しかなかった。
そのテレビを片耳で聞きながら、ネットの巨大掲示板を流し読みしていた。
ニュー速ではスレがパート1020まで立てられていた。軍事板では青春ソー・ロングの放送だけから地球の軍事力の推論が始まり、
食べ物板ではハンバーガーを作り始める人々が続出した。
株式板では宇宙産業と音楽産業の株価が暴騰するだろうという意見とその売り煽りの意見に別れた。
同性愛板では藤田の人気が上がる一方、既女板ではこんんあ男とは結婚できないと最低だった。
独男板では勝手に優子を想像し、同人板の職人が想像図を描き、VIPPERが囃し立てた。
メンヘル板では今日死ぬ宣言をしていた住人が「次の放送まで生きようと思った」と発していた。
どの板のどのスレも流れるような書き込みの中、
474 名無しさん@七周年 New! 2007/01/17(日) 16:42:46 ID:oqQBYejv0 1
この早ささなら言える
私もクラスのイモオのことが好き
という書き込みがマリーミーの目に止まった。その書き込みは本当にスレの流れの速さに流れてしまって、
他の誰からもスルーされていたけど、マリーミーは胸がとくんとして、何度も(私もクラスのイモオのことが好き)と口に出して呟いた。
ふと、イモオの部分を同じクラスの男子、ラッシェンに変えて(私もクラスのラッシェンのことが好き)と言ってみた。
胸がどきんと鳴って、心臓が止まるかと思った。ごくんと音を立ててつばを飲み込んだ。
それから急にそわそわしてしまって、ラッシェンのことを考えまいとして頭を振ったり、
目を固く閉じて頭を抱えたりした。でもラッシェンのことが気になってしかたがなく、自分の頭がおかしくなってしまったのではないかと思った。
そんな悶々とした状態の中、外の空はどんどん白んでゆき、雀が鳴き始め、朝食の時間になった。
父も母も昨日の放送は少しは聞いているはずだった。母は黙ってアンチョビサンドを切っていた。
父はいつもは新聞を読んでいるのだが、今日は気まずそうにコーヒーをすすっていた。
最後に小学生の弟が起きてきて、「昨日宇宙人はどんなはなしをしたの!?」と父に真っ先に問いかけた。
父は「…食べ物とか、生活の話だよ」というのが精一杯だった。母も私も黙っているしかなかった。
「地球人はどんな食べ物をたべてるの!?」「なんか、パンに、ハンバーグと野菜を挟んだものみたいだぞ」
「なにそれ」と言いつつ弟はテレビをつけようとしたが、父が「テレビらめぇ」と思わず大声を出した。
弟はびくっとして母の方を見た。母は「はやくごはんたべて学校へ行きなさい」と言うだけだった。
弟だけハイテンションの中、父と母と私はアンチョビサンドを食べた。でも私は食欲がなくて1/3も食べられなかった。
静かな食事の最中、突然「愛し合ってるかぁーい!」と言う叫び声が外から聞こえてきた。
隣のお兄ちゃんの声だ。隣のお兄ちゃんは二浪中だった。勉強のしすぎ上に昨日の放送がトリガーになって頭がおかしくなったんだと思った。
隣の家で誰かが階段を駆け上がる音がして、おばさんの「止めなさい、止めて、お願い」と泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
それでもお兄ちゃんが「愛し合ってるかぁーい!」と叫ぶと、今度は遠くから女性の声で「私も愛されたいー!」との叫びが聞こえた。
(03:05)
2007年12月19日
(どうしてあの恋は奇跡的にうまくいったのだろうか。)
いま考えれば、宝石のようなあの思い出を切なく思い出すだけだった。
初めて待ち合わせた渋谷駅。彼女は白いブラウスに長いスカートをはいていた。
スカートの色は、青だったたように思う。こうして少しずつ忘れていくんだろう。
彼女はうつむき加減に、両手でバックを持っていた。
それらから僕らは、山手線が通るたびにうるさいレストランでビーフンを食べ、
エヴァンゲリオンの話をした。
次の週末も映画に誘い、いまはもう無い靖国通り沿いのガラス張りの喫茶店でお茶をして、
「ふつーに楽しかった」と別れた。ふつーに楽しかった。って言われたことが特別に嬉しかった。
初めてのキスは三軒茶屋の駅で、別れ際の時だった。
世田谷公園で星空を見上げた後、駅まで歩いた。
そこで僕は彼女にわざとらしく抱きついた。抱きついても平静を装ってる彼女に、
「抱きついてもクールなんて悔しいっ。これならどうだ」と言わんばかりに、
唇を奪って、それは静かな10秒くらいのキスだった、離したときの彼女のキラキラした目を見て、
「じゃあねっ!」と怪盗ルパンよろしく地下鉄への階段を駆け下りた。
駆け下りながら(キスしちゃった!)とすっぱい気持ちになった。
「僕は初めて会ったときから華子のことが好きでしたよ!」と言うと華子は、
「私は会う前から好きでしたよ!」と言い、
世界中の恋人たちに漏れず、僕たちも運命という言葉を軽く信じた。
しばらくは前歯がかつんと当たるキスも、次第にうまくできるようになり、
僕たちは会社を休んで布団の中で手を握って、夕方までコーネリアスのPointを聞いていた。
彼女のシャンプーが、布団の匂いがとても好きだった。彼女が黙ってトイレに行く。
寂しい気持ちになった。彼女が用を足す音を聞いていた。彼女が部屋に戻ってきて、
洗った冷たい手を布団の中の僕の手に絡ませ、体を布団に滑り込ませた。
僕が彼女をぎゅっと抱くと、彼女は収まりがいいように丸くなった。
夕方になり薄暗くなる部屋、少し肌寒い季節、CDラジカセから繰り返し繰り返しPointが流れて、
これで何度目のDropだろう。華子はまた何も言わずに布団から出た。
僕は山に捨てられた子犬みたいな気持ちになった。
彼女は台所でお湯を沸かし、ローズヒップティーを入れてくれた。
形も大きさも違うカップで、僕らはふーふーと冷ましながら熱いローズヒップティーをすすった。
いま考えれば、宝石のようなあの思い出を切なく思い出すだけだった。
初めて待ち合わせた渋谷駅。彼女は白いブラウスに長いスカートをはいていた。
スカートの色は、青だったたように思う。こうして少しずつ忘れていくんだろう。
彼女はうつむき加減に、両手でバックを持っていた。
それらから僕らは、山手線が通るたびにうるさいレストランでビーフンを食べ、
エヴァンゲリオンの話をした。
次の週末も映画に誘い、いまはもう無い靖国通り沿いのガラス張りの喫茶店でお茶をして、
「ふつーに楽しかった」と別れた。ふつーに楽しかった。って言われたことが特別に嬉しかった。
初めてのキスは三軒茶屋の駅で、別れ際の時だった。
世田谷公園で星空を見上げた後、駅まで歩いた。
そこで僕は彼女にわざとらしく抱きついた。抱きついても平静を装ってる彼女に、
「抱きついてもクールなんて悔しいっ。これならどうだ」と言わんばかりに、
唇を奪って、それは静かな10秒くらいのキスだった、離したときの彼女のキラキラした目を見て、
「じゃあねっ!」と怪盗ルパンよろしく地下鉄への階段を駆け下りた。
駆け下りながら(キスしちゃった!)とすっぱい気持ちになった。
「僕は初めて会ったときから華子のことが好きでしたよ!」と言うと華子は、
「私は会う前から好きでしたよ!」と言い、
世界中の恋人たちに漏れず、僕たちも運命という言葉を軽く信じた。
しばらくは前歯がかつんと当たるキスも、次第にうまくできるようになり、
僕たちは会社を休んで布団の中で手を握って、夕方までコーネリアスのPointを聞いていた。
彼女のシャンプーが、布団の匂いがとても好きだった。彼女が黙ってトイレに行く。
寂しい気持ちになった。彼女が用を足す音を聞いていた。彼女が部屋に戻ってきて、
洗った冷たい手を布団の中の僕の手に絡ませ、体を布団に滑り込ませた。
僕が彼女をぎゅっと抱くと、彼女は収まりがいいように丸くなった。
夕方になり薄暗くなる部屋、少し肌寒い季節、CDラジカセから繰り返し繰り返しPointが流れて、
これで何度目のDropだろう。華子はまた何も言わずに布団から出た。
僕は山に捨てられた子犬みたいな気持ちになった。
彼女は台所でお湯を沸かし、ローズヒップティーを入れてくれた。
形も大きさも違うカップで、僕らはふーふーと冷ましながら熱いローズヒップティーをすすった。
(04:48)