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IT会社「ICF」を強制捜査へ 買収先実績偽装の疑い

2008年02月08日

 東証マザーズ上場のIT関連会社「アイ・シー・エフ(ICF)」(現オーベン、東京)が、大阪市の広告会社を買収する際に過大評価した虚偽の企業情報を公表した疑いが強まり、大阪府警と証券取引等監視委員会は、証券取引法=現・金融商品取引法=違反(偽計取引)の疑いで、週明けにもアイ社関係者ら5人前後について強制捜査に乗り出す方針を固めた。府警などは、アイ社関係者が自社の株価をつり上げて株取引で巨額の利益を得る意図があったとみて調べる。

表   
グラフ   

 株式交換で買収先の企業価値を過大に評価するなどし、自社の株価のつり上げを図る手法は、07年3月に東京地裁で実刑判決が出たライブドア事件と酷似している。アイ社では一時期、ライブドア元取締役の榎本大輔氏(36)が企業合併・買収(M&A)を立案する最高戦略顧問に就いていた。

 アイ社は2年間で計16社の買収を繰り返し、この間に株価が最大で4.6倍に上昇。株式交換で発行した新株の一部が、相手側企業を通じてアイ社関係者に流れていたという。

 今回、過大評価された疑いが強いとされるのは、「大阪第一企画」。04年12月、アイ社は「主要な新聞社や雑誌社との取引実績がある」などとして大阪第一企画に約8億円の評価をつけ、株式交換の形で買収すると公表した。

 関係者によると、大阪第一企画は同年9月末に債務超過に陥っていたが、翌月から元暴力団幹部の男(57)が実質的に経営する情報提供会社「梁山泊」からの広告の発注量が急増し、業績は一気に好転した。

 しかし、実際の業務の大半は書面のやりとりだけで、梁山泊と関係が深い別の広告会社に丸投げされていた。売上高は事実上の水増しで、公表された取引実績は実態に乏しかったという。

 アイ社関係者らは梁山泊の実質経営者と共謀して、このような虚偽の企業情報を公表した疑いが持たれている。

 買収の公表後、アイ社は当時の平均株価で8億円相当となる自社の新株2365株を発行。05年2月、大阪第一企画の全1600株と交換して同社を完全子会社化したと公表した。

 アイ社はその翌月、大阪第一企画の業績を算入した連結売上高を公表し、「前期比462%増」「創業以来最高の月次売上高を更新」などと好成績をPR。この日、アイ社株の出来高は前日の8倍に達し、株価も33万3千円から36万4千円に約1割上昇した。

 府警と監視委は、アイ社関係者らが株式交換で発行した自社株を還流させ、高値をつけた段階で売って多額の売却益を得た疑いがあるとみて、これらの買収についても調べている。

 《株式交換》 企業を買収する際、現金ではなく買収額に応じた自社株を差し出すことで、相手企業の全株と交換する手法。日本では99年の商法改正で解禁された。現金を用意しなくても済むため買収を促進するとされる。

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