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迫る 新型インフルエンザ 鳥取県内の備えは

 人から人へ感染する新型インフルエンザの大流行(パンデミック)が懸念されている。東南アジアを中心に死者が出ている強毒性H5N1型の鳥インフルエンザウイルスが変異して生まれる新型。いつ発生してもおかしくない危惧(きぐ)の中、世界中が対策を急いでいる。行政や医療機関、企業、住民は迫る新型の流行にどう備えるか。鳥取県内の取り組みと課題をリポートした。

2008/02/08の紙面より
(上)限られた生命線

「最悪」想定、具体策急ぐ

 『約十五万二千五百人が感染 最大で十一万九千二百人が医療機関を受診 三千五十人が死亡』

 新型インフルエンザの大流行を想定した鳥取県内の最悪のケースの被害推計だ。

 鳥取大学の伊藤寿啓教授(獣医公衆衛生学)はウイルスの研究を続けてきた。「人に免疫はなく、発生を食い止めることはできない」。致死率の高いH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが毒性を維持したまま変異し、人から人へ簡単に空気感染しなければいいが。不安を募らせる。

■優先順位

 被害を最小限にとどめるには、ワクチンの備蓄と適切な投与が欠かせない。

 新型の流行初期に接種する「プレパンデミックワクチン」は、H5N1型から製造され、国内では現在、一千万人分を備蓄。人口割りで試算すると、鳥取県内に配分されるのはわずか五万人分程度だ。

 「接種できるのは限られた人たちだろう」。県健康政策課の石田茂課長補佐が苦悩を打ち明けた。未認可医薬品のため、独自に入手できない。国が新年度中に三千万人分まで増やす予定だが、それでもすべての住民に投与できないという危機感がある。

 威力を発揮するのは新型のウイルスから作る「パンデミックワクチン」。新型が発生してから製造を始め、供給までの期間は六カ月−一年間という。だが、新型は第一期の流行が収まるまで二−四カ月。開発期間を短縮する研究が急がれる。

 限られたワクチンを誰に投与するか。優先順位の課題も残ったままだ。国は医療従事者を最優先する方針だが、石田課長補佐は「問題はその次。一般住民になるのかどうか。乳幼児か高齢者か、それとも弱者の面倒を見る若い人たちか。行政は難しい対応を迫られる」と話す。

■戸惑う現場

 県は一昨年、新型の対応行動計画を策定した。より具体的に態勢を整えるため、三月末完成を目標に対応マニュアルの作成を進めている。感染者を受け入れる病院、患者の調査票、情報公開の在り方、死亡者の埋火葬…。A4判で二百ページ余りに及ぶ。

 保健所や県の職員が使う五千人分の感染防護服、感染者用の一万人分の高機能マスク、消毒薬などを新年度に購入することも考えている。

 一方、自宅待機を強いられた独り暮らしの感染者に対し、買い物や食事などの日常生活をどう支援していくか。住民への広報はどうするか。市町村の役割が重要になる。

 約十九万枚の高機能マスクを備蓄する鳥取市は、発生時に有線放送やケーブルテレビ、ラジオで緊急周知する仕組みを整えた。

 だが、職員の万が一の対応は。県内自治体のある担当者は「いざという時に、感染者や独り暮らしがどこにいるか把握できるだろうか。それに感染者にどう接触したらいいのか。職員が感染したら元も子もない」と戸惑う。

 伊藤教授は警鐘を鳴らす。

 「手洗い、うがいやマスクも効果はあるが、完全には防げないだろう。どんな病気か分からないため想定しながらの難しい準備になるが、最悪のケースを考えた一日も早い対応が必要だ」

 人から人へ感染する新型インフルエンザの大流行(パンデミック)が懸念されている。東南アジアを中心に死者が出ている強毒性H5N1型の鳥インフルエンザウイルスが変異して生まれる新型。いつ発生してもおかしくない危惧(きぐ)の中、世界中が対策を急いでいる。行政や医療機関、企業、住民は迫る新型の流行にどう備えるか。鳥取県内の取り組みと課題をリポートした。


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