安井修二研究室


★安井修二のプロフィル

1945年愛知県生まれ
所属:経済学部
1.教育
2007年度後期担当科目
 アジア経済論
 基礎ゼミ 3年次演習 4年次個別演習 夜間主演習T

2.研究
最新論文 「有機農業と循環型社会について」(『香川大学経済論叢』第80巻第3号)


待機しながら、思うこと

 待機というのは、定期試験中に、教員のなかで試験監督を忘れたりする人間がいるから、学生生活委員会のメンバーが試験が始まる頃に、部屋に行って、全員きているかどうか確かめることを言う。大学にとって、定期試験は重要な行事であるから、セーフティ・ネットを張っているわけである。
 試験監督の先生が全員集まって、試験が滞りなく行われても、研究室で待機していなければならない。もし試験時間中に不正行為でもあったら、われわれ学生生活委員会のメンバーが駆けつける必要があるためである。

 ということで、待機といっても、暇なので、試験時間割表をみてみた。たとえば、私が担当した「アジア経済論」は、水曜日の2時限目の科目であったが、ここには、経済学科からも経営システム学科からも1科目ずつ配置されている。
 そこに、履修者数が入っている。「政治経済学U」が132名、「人的資源管理論A」が233名、「アジア経済論」が117名である。さすがに「人的資源管理論A」は多少人気科目かなと思われるが、それでも、3科目それぞれバランスのよい人数となっている。
 1年次配当の科目は、履修者が多く、200〜300名、場合によっては、「経営学概論」のように451名になっているものもある。但し、これは特殊な科目群である。

 1年次配当の科目を除いた上で、履修者が300名を超える科目がいくつかある。学生は楽勝科目だと思っているかもしれない。どちらかというと、地域社会システム学科の科目にそういうものが多い。これは、地域社会システム学科以外の学生も履修するから、実現している数値だと思われる。

 さあ、それで、だ。
 何が言いたいかというと、私が昔、履修単位の上限設定やGPAの導入や早期卒業などを入れて行ってきた教育改革は、一体どういう意味をもっていたのだろうか、と。単位を与えるときは、学生に授業時間の2倍の学習をさせるというのが、その精神であった。この履修者の数値をみると、そういう精神で授業をやっている先生もいるが、そうではなく、昔ながらの教育を続けている先生もいるということだろう。

 さあ、それで、だ。
 教育改革は成功していないのだろうか。よく考えると、すべての先生が、学生に学習を強制していたら、おそらく部活などできなくなってしまうし、大学生活は少し興ざめになってしまっていることだろう。
 世の中、学生にはもっと勉強させろと言いながら、企業などは、自分が関わるようなことは(就職・採用の仕方も含めて)何一つ変えようとしない。だから、教育改革の理念通りにやっていたら、大学教育はパンクしてしまう。

 以下は、私の想像だが、学生は、それなりに考えて行動しているに違いない。たとえば卒業所要単位が124単位であるとすると、個別演習・卒業論文の8単位を除いた116単位を3年の終了までに取得しておこう。そして、3年の終わりから4年の初めの就活をきちんと処理して、4年の後半は、指導教員もうるさく言うから、卒業論文を必死に書いてみよう、どうせ人生そんな長い論文を書くのは一度しかないのだから、と。
 そして、そうなると、116単位をうまいこと取得しなければならない。教養の科目だけは早く済ませておいて、数の多い専門科目をどうするかがポイントとなる。ある程度は数をこなさねばならないから、まず、楽勝科目を押さえておこう。その上で、多少単位取得が容易じゃないとしても、どうしても聞いてみたい科目はきちんと押さえておこう、と。

 修学相談
 新学期が始まると、新入生に向けて、修学相談というのが開催される。一つの部屋で、各学部から2人ほどの教員が出てきて、新入生の修学相談をしてやるというものである。
 私は、大学教育開発センターにいたこともあって、何度も経験している。ところが、最近は、この日に、経済学部では3年生のゼミの選考がある。したがって、なかなか教員が出にくい状況となっている。
 私はもう来年度はゼミの募集はない。だから、空いている。だから、俺がやってやろうかと言ってみた。こういうことを言う人もめずらしい。頼まれもしないのに、自分からやろうかと言うのだから。
 しかし、もしやるとするなら、新入生に「楽勝科目をきちんと押さえておきなさい」と言ってはいかんわなあ。そうしたら学生は「楽勝科目はどれですか」と聞いてくる。「ここだけの話だけど、○×科目と×○科目なんだよ」と答えてはいかんわなあ。
 なぜこう思うかというと、経済学科で学生の評価が高いA先生も、地域社会システム学科で学生の評価が高いオノレ先生も、履修者は少なくはないが、多くもない。おそらく選ばれるべくして選ばれているからであろう。経営システム学科で学生の評価が高いK先生の場合は、3年次配当でありながら、履修者が206名である。これは、「流通システム論B」という科目の中身が、ミクロ経済学や言語学概論より取っつきやすいからであろう。
 だから、逆に、履修者の多い「楽勝科目」もある程度までは必要なのだ。学生の単位取得が容易だということと、授業内容の濃さとは別である。単位取得は楽だけど、なかなかおもしろい授業だったなあ、と学生に思わせるとすれば、それはそれで十分評価していいのだ。
 種類としては、@おもしろいが単位取得も難しい、Aおもしろいが単位取得は容易だ、Bおもしろくないが単位取得は容易だ、Cおもしろくないし単位取得も難しい。私の評価は、@とAは同じ評価で、BとCを比較するなら、Bの方がまだいい、というものだ。
 私の場合
 私の場合は、BとCの間である。
 まず、おもしろい授業ではない。何度もやってきた授業評価で明瞭に結果は出ているからである。もう言い訳はしない。現学部長のH先生と並んで、学生諸君の評価が低い代表的な科目が、私が担当する科目である。H先生とは、お互い、悪いのは学生さ、と言いながら、改良なんかするものかと思っている。
 さあ、それで問題は、単位取得が難しいかどうかだ。学生には難しい科目だと判断されている。私の意見はこうだ。小テストや中間試験では厳しい態度をみせ、簡単には単位が取れないということをみせる。「甘えるんじゃない!」とね。
 しかし、最終的な合格ラインは、60〜70%台を維持する。出来が悪ければ、ゲタをはかせることも厭わない。履修単位の上限設定がなかった頃は、もう少し合格率を低くしていたが、いまなら履修した2年生や3年生は大体最後までつきあうから、それを念頭において、60〜70%台、もう少し上げて80%台になる場合もあるかな、の合格率を出している。
 だから、BとCの間である。どうせおもしろいとは言われない授業である。「フン、厳しくしてやれ」でもなく、「高い評価を勝ち取るために、甘くしてやれ」でもない、このあたりの態度は、そこそこいいやり方だと思っているのだが、ねぇ。
結論
 こんなことを考えているわが輩は暇人である。暇人の意見として、学生は、学生ならではの判断で、的確な科目選択をしているようだ。だから、いまのところ、この学部に入学して卒業していく場合、ものすごく満足しているということはないが、ものすごく不満だということもない。まあまあよかったという判断をしているものと思われる。
 そこで、私がやってきた教育改革は、その精神は貫徹されていないが、貫徹されていないが故に、まあまあうまく機能しているのかもしれない、というべきなのだろう。