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英国住宅金融会社問題

2008年02月08日

 久しぶりに英国出張をした。金融街はシティーと決まっていたが、今はテムズ川をロンドンブリッジから少し下ったカナリーワーフという場所に銀行や証券会社のオフィスが新築されている。そこで、英国北東部に地盤の中心がある、住宅金融会社のノーザン・ロック(NR)の救済策についての話題を聞いた。

 NRの住宅ローン残高は約4兆円と、英国第5位の規模である。76カ所しかない支店で集めた預金、投資家や金融機関からのパッケージローンやそれらを流動化した債券により資金調達をしてきた。しかしながら昨年8月にサブプライムローン問題が深刻化し、投資家やヘッジファンドがNRの債券を買わなくなり、資金調達が不能となった。続いて9月には市場に身売りの話が伝わり、預金者による大規模な取り付け騒ぎにまで発展したのである。政府や中央銀行も苦肉の策として、NRに対し250億ポンドの緊急融資を行い、一応騒ぎは収まった。

 問題は約5兆円もの多額の税金資金を、金融システム不安解消とはいえ信用力に問題のあるNR一社に投入したことである。直近、政府側より新たな提案が出された。緊急ローンに見合う債券をNRに発行させ、政府の保証をつけた期間50年までの債券を投資家に売却することで資金を調達し緊急融資を返済させ、その一方でNR自体を民間セクターに購入させる、という案である。

 今回の英国にとっての教訓は、少額預金者保護を目的とした預金保険機構や金融機関のセーフティーネットの必要性であろう。同時に経営の問題点を徹底追及し、救済方法についても国民に対して十分な説明が必要となろう。日本も金融システム不安に直面し様々な経験をしたが、サブプライムも日本の金融機関に多かれ少なかれ影響があったわけで、英国の住宅金融会社問題も他山の石として気を引き締めるべきだろう。(QJ)

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