2003年3月15日

 アレッポといえば、「アレッポ石鹸」。日本にも「アレッポ石鹸」のファンは増えてきているような気がします。インターネットを通した通信販売のページもよく見かけます。身近になってきたアレッポ石鹸ですが、その石鹸がどうやって作られているのかまで含めて知っているという人はそれほど多くないように思います。

 我々も、アレッポに住み始めて1年ほどが経ちましたが、アレッポ石鹸の工場がどこにあるのかすらよくわからないままでいました。ところが、先日、機会があってアレッポ石鹸の工場を見学することが出来ました。今日は、その様子をお伝えしようと思います。

 我々が訪れたのは、「Zanabili工場」です。名前の通り、「Zanabili」一族が経営する工場ですが、この工場は未だに昔ながらの製法で石鹸作りを続けていることで有名です。また、製法だけでなく、「質」の面でも優秀で2001年には「Golden Europe Award for Quality」という賞も受賞し、そのクオリティの高さはヨーロッパでも認められています。

 アレッポ石鹸の特徴は、この地方でとれる良質のオリーブオイルにローレルオイル(月桂樹のオイル)を混ぜて作るところにあります。街にある石鹸屋さんでは、いろいろな色のアレッポ石鹸を目にするのですが、こうした色の違いは、この「月桂樹」の含有量によっても左右されます。

 アレッポ石鹸は、冬の限られた期間にしか製造されません。石鹸作りには、冬の寒さが不可欠です。石鹸作りは、まず原料を大きな釜の中で溶かす作業から始まります。この中で、オリーブオイルとローレルオイルが混ぜられることになります。

 釜の中で仕込まれた原料は、ポンプを使って工場の2階に送られていきます。工場の2階には、横2m、縦6m位の木の枠がたくさんあります。その中に溶かした原料を流し込み、3日寝かすことで固めるのです。

 3日間、木の枠の中で原料を寝かせると石鹸が固まります。石鹸が固まると、次に石鹸を切る作業が待っています。この切る作業がなかなかの職人技です。視覚的にもいちばん楽しい工程だと思います。

 石鹸を切るのには、特別な道具を利用します。そして、子供を含めた6人のチームワークで作業が行われます。作業は淡々と続けられますが、見ていて飽きることがありませんでした。

 切る作業が終わったら、次に工場の刻印を石鹸に押していく作業です。この刻印は一種の保証書のようなものであり、石鹸商人たちはこの刻印によってどの工場で作られた、どのクオリティの石鹸か判断しています(もちろん、こうした石鹸商人は石鹸の質を見分けるプロであり、刻印だけに頼るのではなく、においや色などを自分で確かめ総合的に判断している)。

 刻印が押されれば、石鹸としての形は一応完成ですが、質の高い石鹸に仕上げるためには、この後長い時間をかけて寝かせる必要があります。寝かす際もただ寝かせればよいというわけではなく、風通しなどにも細心の注意が払われます。

 こうして、アレッポ石鹸はつくられていきます。工程自体、非常にシンプルなのですが、そこには長年の勘や技術がいたる所に生かされているのです。ただ、こうした伝統的な石鹸作りにこだわり続ける工場は、ここアレッポでもどんどん少なくなっているようです。ただ、この工場ではこれからもこの「伝統的」な製法を守っていく方針のようです。これからも、がんばり続けてほしいと思います。

「Zanabili工場」の入り口

釜の中で原料を混ぜている様子

木の枠に溶かした原料を
流し込む作業員

石鹸を切るのに使われる道具

石鹸を傷つけないように
作業員は「忍者の道具」
のようなものを履く

6人のチームワークによって
石鹸を切っているところ

刻印も全て手作業で押されていく

刻印を押し終わった石鹸は
このように積み重ねられ
しばらく寝かされる

一定時間経った石鹸は
再び積み上げられ
数ヶ月から数年寝かされる

完成したアレッポ石鹸