昨秋以降の原油高騰に伴う灯油の値上げによって、北海道や東北など寒冷地の在宅患者が厳しい生活に置かれていることが、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連、肥田泰会長)の緊急調査で2月7日、明らかになった。外気と同じ零下4℃の室内で石油ストーブを使わず寒さに耐える高齢者の報告もあり、健康悪化はもとより在宅凍死≠フ危険性もあり得る問題点が浮かび上がっている。こうした深刻な事態を受け、全日本民医連は同日、福田康夫首相と舛添要一厚生労働相に緊急援助策を求める要望書を提出した。
調査は、灯油価格の高騰で特に寒冷地の暮らしに対する深刻な影響が指摘されている中、高齢や独居の在宅患者の実情を把握するために実施。在宅患者で65歳以上の独居・夫婦の世帯などを対象に行い、北海道・青森・宮城・秋田・山形・福島・新潟・富山・石川・福井・山梨・長野の12県から321件の報告をまとめた。
寒冷地の在宅患者は、北海道などで灯油代が10年前と比べ倍増しているという指摘もある中、暖房費を節約していることが多く、321件のうち室温測定された230世帯では、室温5℃以下が3%、6〜10℃が8%、11〜15℃が17%、16〜20℃が42%と、全体の7割が20℃以下。「部屋の中で生活していても外気温とほぼ同じという環境での生活を余儀なくされている高齢者が少なくない」ことが明らかになった。
この室温に関しては、経済状態と密接な関係にあることも分かり、平均室温を見ると、生活保護世帯が16.5℃、住民税非課税世帯が17.5℃、住民税課税世帯が18.8℃と、全体的に室温が低いうえに、各世帯の平均値は約1〜2℃あった。
具体的には、3℃の室内ながら「灯油がもったいない」とホームヘルパーが来ている数時間だけストーブを付ける生活で食費も切り詰めている(青森県・80歳女性)▽透析患者にもかかわらず、灯油代が高くなり、昼・夕食の配食弁当を中止。ストーブは食事の時に限っている(山形県・66歳男性)▽来客時のみにストーブを使用。(このような生活実態にもかかわらず、負担が重くなる)後期高齢者医療制度について「早く死ねということだろうか」と嘆き、「制度を中止してほしい」と批判(石川県・101歳女性)▽厚着(上5枚・下4枚)で寒さをしのぐ生活。冬に血圧の上昇が見られるが、今年はその傾向が強くなっている(長野県・78歳男性)▽外気温と同じ零下4℃の室内でコタツに入って必要以外は動かない生活。「生活保護基準以上に働いて税金を払ってきた。寒くないよう、腹が減らないような生活がしたい」と訴え、「政治家が無駄に税金を使ったり、ごまかしたりしないで」と要望(長野県・78歳女性)−など、多数の困難な生活実態が浮き彫りになっている。
このような報告を踏まえ、全日本民医連は「貧困・孤独・病気という事情に寒さが追い討ちをかけている」と指摘。「外気温とあまり変わらない室内環境での生活を余儀なくされている高齢者の実態は深刻。寒さに耐えるとともに、暖房費以外の食費も切り詰めている。在宅患者の健康悪化が心配で、在宅凍死≠ニいう事態も懸念される」と警告している。
そのうえで7日、福田首相と舛添厚労相に対し「灯油をはじめとした諸物価の高騰が国民の家計を直撃している。国と行政の責任で寒冷地の在宅患者、低所得者の実態を把握し、緊急に援助策を講じること」などという緊急要望書を提出した。
更新:2008/02/07 19:09 キャリアブレイン
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08/01/25配信
高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。