“我は木偶(でく)なり、遣われて踊るなり…”
……、なぁ、俺がそんなに怖いかよ?
俺は、自分そして自分が守らなくてはならないもののために、沢山の余計なものを捨てて身軽になった。そして、いわばあんたの“犬”にまで成り下がったつもりだ。
中途半端なプライドなんかくそくらえだ。俺は俺であること、それだけ自負できればもういい歳だし、何の文句がこの俺にあると言うんだ。
……、なぁ、俺がそんなに怖いかよ?
あんたあっての俺だ。そんなことこれっぽっちもはき違えちゃいない。それが一体どういうざまだ?あることないことぬかしやがり、俺のケツの匂いまで嗅ぎ回るような下衆野郎にいつから成り果てたんだ?
俺が現れるまで、さぞやあんたいい気分だったろうな。何しろ回りがそっち方面にはトーシロ連中だしな。最初は俺もあんたとうまくやりたかったし、あんたもきっとそうだろう。「どうか、俺のことをうまく使いこなしてくれよ」、俺はその想いだけだった。
どっちが顔売れてる売れてないなんてどうでもいいじゃないか?お互いがお互いを補完し合えばいいだけの話だ。それをあんたときたらさ…。
どう考えたって、俺の方が名前も顔も売れてる局面は多々あるさ。だからそれをあんたにうまく利用してもらいだけだったんだよ。
「最初の突破口での泥は全部俺がひっかぶる。だから、あんたたちはそこで俺が道をならしてから来てくれればいい」
そしたらあんた、こともあろうになんてぬかしたっけ?
「あんたがやるのはそれだけなの?ふーん、ただの業務委託のお手伝いさんだね」
その“お手伝いさんレベル”のことも今までいっちょまえにできなかったくせに、御大層なセリフをはくじゃねぇか?そのくせ、俺が連れて来た新しいブレーンのケツの匂いは散々嗅ぎ回りやがる。まったくお里が知れるぜ。
どうして、言葉を額面通りに受け取ることができない?「誰もそんなこと言ってないだろうに…」、なぜこれの繰り返しなんだ?
……、なぁ、俺がそんなに怖いかよ?、そんなに俺が虫が好かねえのかよ?
わかってるよ、あんたの吹けば飛ぶよなプライドとかいうものを俺の存在そのものがぐらつかせてるんだろうからな。
はじめて会った時とあんた確実に変わっちまったよ。でも、それももしかしすると俺という人間の存在のせいなのかい?
あんたら、自分以上に大切に守りたいものがあるか?
俺には相方も“ノリゾー(仮名)”も大事だ。“血の濃さ”なんか関係あるか。“ノリゾー(仮名)”がいつも連るんでる“三バカトリオ”の“池ちゃん”や“ちぐちゃん”だって愛すべきばかちんたちだぞ。
俺きっと今、仕事の時には「英二」や「勇次」みたいに殺気立ってんだろうな。でもな、頼むよ。大切な奴らといる時だけは「たー坊」(「親子ゲーム」より)みたいな男でいさせてくれよ。お願いだからさ…。