薬局と医療機関の間の情報共有の効率化などを進めるため、処方せんの電子化について検討してきた厚生労働省の「医療情報ネットワーク基盤検討会」(座長=大山永昭東京工業大学像情報工学研究施設教授)は2月7日、現状で処方せんを電子化することは困難との考えを示した作業部会の報告書案を了承した。政府のIT戦略本部による提案を受けて検討を進めてきたが、患者の薬局へのフリーアクセスを阻害することなどが問題とした。ただ、これらの課題は今後解決できるとした上で、実現に向けた検討を求めている。厚労省は年度内にIT戦略本部に報告書を提出する。
電子処方せんは、医師が処方内容を情報記録機能のあるカードなどに入力することで、薬局がカード情報を読み取って調剤したり、医師が以前の調剤情報を参考にして処方できたりすることなどを想定したもの。医療機関と薬局間の情報共有や処方せんを扱う事務の効率化、経費削減などがねらいで、政府のIT戦略本部が策定した「IT新改革戦略」の調査会が2007年の3月に発表した報告書の中で提案していた。同戦略が11年度に完全実施を目指しているレセプト請求のオンライン化に併せ、処方せんも電子化すべきとした。これを受け、同検討会の作業部会が07年11月から議論を続けてきた。
作業部会の報告書案では、電子処方せんのメリットとして、以前に処方情報への疑義照会や後発医薬品への変更などがあった場合、カードを読み取るだけで情報が把握できるため、医師に情報フィードバックしやすいことなどを強調した。また、現在厚労省が検討中の、健康保険被保険者証や年金手帳などの機能を1枚のカードに集約する「社会保障カード(仮称)」に電子処方せんの情報を載せることも提案した。しかし、処方せんを読み取れるシステムを設置していなければ調剤ができないため、各薬局のシステムの導入状況によっては患者のフリーアクセスを阻害する可能性があることなどから、現時点での導入は難しいとの見方を示している。これまでの作業部会でも早期導入の実現には否定的な見解が多数を占めていた。
ほかの問題点として、医療機関や薬局、患者がそれぞれ電子化した処方せんを扱うインフラが必要になるため全体としてコストがかかることや、第三者に情報が読み取られる可能性を指摘。さらに、軽い破損でも情報が読み取れなくなるために患者が調剤した薬剤を受け取れなくなることなども挙げていた。
ただ、その一方で「将来にわたり実現不可能な課題ではない」と記載。今後検討を進めて基盤整備し、国民の理解を得るよう求めている。
更新:2008/02/08 13:52 キャリアブレイン
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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。