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【放送芸能】

倖田来未の不適切発言 ネット介し問題大きく 『軽率だった』TVで涙の謝罪

2008年2月8日 朝刊

 ラジオ番組での不適切発言が問題になっていた人気歌手の倖田来未が七日夕方、フジテレビの「FNNスーパーニュース」にビデオ出演し、涙ながらに謝罪した。「三十五歳を過ぎると羊水が腐る」と漏らした一言に、インターネット上などで批判が噴出。出演CMの放送が中止されるなど影響が広がっていた。この日の釈明に至る〓末(てんまつ)とは−。  (宮崎美紀子、安食美智子)

 活動休止状態となっている倖田の肉声が伝えられるのは初めて。収録は六日に行われたという。

 ビデオ出演は、「倖田来未さん“涙の謝罪”」のタイトルで、芸能コーナーのキャスターによるインタビュー形式。倖田は、黒いパンツスーツに白いシャツという地味な姿で、約十五分にわたり質問に答えた。

 この間、倖田は何度も涙を流し、「すごく軽率な言動だった。どれだけ自分が軽い気持ちで言葉を電波に乗せていたのか、あらためて感じた」「普段からの自分の言葉の使い方が良くなかった」と反省の言葉を連ねた。

 「羊水が腐る」については、自らインターネットで調べた結果、根拠がないことが分かったという。「少しでも早く子どもを産んでほしいという気持ちを伝えたかった」と釈明し、最後に「冗談を大きく表現する癖がある。そういう自分の言動を一つ一つ見直したい。また皆さんの前に立てる日を目指し、反省をしっかりして、一日一日を送っていきたい」と語った。復帰時期については触れなかった。

     ◇

 問題の端緒は、一月二十九日深夜(30日午前1時)からのニッポン放送「倖田来未のオールナイトニッポン」。一日だけの特別パーソナリティーを務める倖田が冒頭、マネジャーの結婚に触れ、「三十五歳ぐらいをまわると、お母さんの羊水が腐ってくる」などと語ったことだ。これを最初に取り上げたのは、一日のインターネットニュースサイトとみられる。

 倖田とニッポン放送は同日のうちに、それぞれホームページで「不快な思いをさせ、ファンを裏切る結果を招いた」「配慮を欠き、誤解を招いた」と謝罪したが、批判はやまず、所属するエイベックス・エンタテインメントは二日、アルバムの宣伝活動自粛を発表するに至った。

 倖田の出演CMを扱う各社も自粛に動いた。

 キリンビールは、昨年七月から放送していた缶酎ハイ「氷結」のCMを「しばらく差し控えたい」(同社広報部)と中止。倖田がイメージキャラクターを務めるコーセーの化粧品「ヴィセ」のホームページも、一日から停止された。「発言について、お客さまから『不快だ』といった苦情が寄せられた」と同社広報室。ほかにも、森永製菓やホンダが、商品ホームページから倖田の画像を削除するなどした。

 そもそも、この日の「オールナイトニッポン」は生放送ではなく、録音番組だった。ニッポン放送編成部は「録音番組は何人かでチェックすることになっているが、この件に関しては怠りがあったと申し上げるしかない」と反省しきり。

 ラジオに詳しい放送作家の石井彰さんは「ニッポン放送のディレクターが止められなかったこと自体が信じ難い。倖田だけが矢面に立っているが、制作側の問題は絶対に大きい」と、局の責任に言及した。

     ◇

 ところで、この件に関しニッポン放送に直接メールで届いた苦情件数は七日昼までに約三百通。しかし、放送直後に殺到したわけではなかった。放送を聴かずに、後からインターネットの掲示板などで発言を読んだり、無断で公開された音声ファイルを聴いたりした人が多かったようだ。

 同局も「(苦情を寄せた人は)リアルタイムで番組を聴いた方だけでないのは確か」と認める。

 芸能評論家の肥留間正明さんは「昔なら、『ものを知らないお姉ちゃんが、バカなことを言った』と、問題にならず終わったはず。特に『オールナイトニッポン』は、何でもありの発言が人気を博していた」と指摘する。ただ、今はネットを介し、脱線気味の発言を織り込み済みのリスナー以外にも広がる時代。

 「有名人は言動に責任を持つべきだが、何かあると集中砲火のように非難が集まり、最後は、テレビカメラの前や記者会見で、泣いて謝るまで許さない。スポンサーも敏感すぎる反応をする。今回の騒動は、最近の典型的なパターン」と肥留間さん。

 石井さんはこう懸念する。「いろいろ自由に言えるラジオだからこそ、伝えることがテレビに比べてより深くなる。騒動を機に、発言に慎重になる、言葉狩りのような方向に行くのを恐れている」

※ 〓は真の旧字体に頁

 

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