米大統領選は民主、共和両党の候補者選びのヤマ場となるスーパーチューズデーを迎え、全米二十四州で予備選・党員集会が行われた。両党とも圧倒的勝利者が出ず、歴史的な大激戦が続くことになった。
八年ぶりの政権奪還が悲願の民主党では、女性初の大統領を目指すクリントン上院議員が地元のニューヨークや最大票田のカリフォルニアで勝利した。黒人初の大統領を狙うオバマ上院議員も黒人の多い南部ジョージアなどを制した。ほぼ互角の戦いだ。
共和党はマケイン上院議員がニューヨークやカリフォルニアで勝ち、優位を固めた。だが、前マサチューセッツ州知事のロムニー氏も地元の同州などを制し、指名争いから撤退しない考えを表明、こちらも決着は持ち越された。
民主党では当初クリントン氏が本命視された。前大統領夫人であり、知名度を生かして序盤戦優位に立った。一方オバマ氏は「変革」を訴え、草の根の支持を急速に広げてきた。一月下旬のサウスカロライナ州予備選大勝で弾みを付け、クリントン氏と互角に渡り合うところまできた。
オバマ氏に勢いが感じられる。クリントン氏に、天王山でも引けを取らなかった。地元イリノイ州シカゴで演説し「われわれの時代が来た」と今後の勝利に自信を示した。オバマ人気が本物であり、支持の拡大がうねりになる可能性もあろう。
クリントン氏も「われわれの戦いを継続する」と指名争いの継続を宣言した。三月に予備選が予定されるテキサスやオハイオなど大票田での勝負が指名争いの行方を左右することになろう。大票田州の組織づくりではクリントン氏の先行が伝えられる。オバマ氏も民主党有力者のエドワード・ケネディ上院議員らの支持を背景に猛追する。
今回の大統領選で両党の候補者選びが混迷している理由は、有力候補者同士の戦いというだけでなく、唯一の超大国である米国が国際的な政治や経済で閉そく状況に陥り、自信を失いかけていることがあろう。イラク戦争の出口は見つからず、信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題の闇も深まっている。米国の立て直しをどのリーダーに託すべきか、有権者が絞り切れていない迷いがうかがえる。
民主、共和両党とも指名レースの舌戦が続くことを歓迎したい。各候補とも相手への中傷合戦などでなく、世界の指導者としての政策の訴えに力を入れてもらいたい。熱気ある政策のぶつかり合いは民主主義の価値を世界にアピールすることにもなる。
二〇〇七年度補正予算が六日、成立した。予算案は野党勢力が勝る参院本会議で否決されたが、衆院では与党などの賛成多数で可決されていたため、衆参両院の代表者による両院協議会を経て、政府原案通りの成立となった。
補正予算案が参院で否決され、両院協議会開催後に成立したのは宮沢内閣当時の一九九三年以来十五年ぶりだ。両院協議会は慣例によって衆院は賛成した与党から、参院は反対した野党からそれぞれ十人の委員が選ばれた。協議は決裂し、憲法の規定に基づき衆院の議決が優先された。
せっかく両院協議会を開きながら、与野党が歩み寄れなかったのは残念だ。衆参ねじれ状況で、与野党の意見が対立する場合の合意形成の重要な場になると期待されているが、形式的な開催に終わった。機能する両院協議会へ、構成メンバーの在り方などを見直す必要があろう。
成立した補正予算は、災害復旧や原油高騰対策、農業対策などが盛り込まれ、追加歳出は一兆七千八百十七億円である。政府は新たな国債は発行せず、財源は金利が想定より低いことによる国債費の使い残しや、前年度の剰余金などで確保した。
国債の追加発行を回避したのは財政規律を緩めまいとする努力を示そうとしたのだろう。だが、補正予算編成は昨夏の参院選で与党が惨敗し、歳出圧力の高まったことが背景にあるのは間違いない。
破たん状態にある日本の財政は高齢化の進展による社会保障費の増大などで今後一層苦しくなる。補正予算成立を受け、衆院予算委員会は七日から〇八年度予算案が審議入りする。予算の無駄を省き、メリハリを利かせるための与野党の真剣な議論が大切だ。
(2008年2月7日掲載)