きむら歯科医院は「トップダウントリートメント」を目指している。患者さんは「できるだけ痛くなく、安く、早く」の医療を望むが、医師は「いい治療には時間もお金もかかる」と考えているのが常である。患者さんの言う通りにするとアンダートリートメントになるし医者サイドだけで考えるとオーバートリートメントになってしまう。そこで「トリートメントプラン(医療面接)」を設定し、患者さん、医師の双方が納得する仕事を責任を持ってやり遂げようという。
「日本の歯科診療は、特に一般保険診療ですと、その場限りのものであるという認識がありました。患者さんにとって一番いい治療をしたいという思いからトップダウントリートメントへと繋がったと思います。」
患者さんのニーズに応えるために年中無休の診療も行う。
「友人の歯科医師がこの国は上から変えないといけないと言って、厚生労働省に仕事の場を移しました。私は逆に、この国を足元から変えようと思ったわけです。その中で、10年前から日曜診療を始めることにしました。地域で初めてのことでしたので、軋轢などがなかったわけではありませんが、患者さんに喜んで頂くために始めました。最近では近隣の歯科医院でも日曜診療をしていますし、歯科医師会でも休日には持ち回りで診療を始めています。私の役目は終わったかなあとも思いますが、患者さんのニーズがあるかぎりは続けていきたいですね。」
木村先生がきむら歯科医院へ戻ってきて以来、約15年で、外来患者数はほぼ10倍の伸びを見せたという。現在は月間平均2000人、一日あたりでは80人となっている。木村先生は「当たり前のことを当たり前にやっただけ」と謙虚に語るが、ペイシェントベネフィットを守ることに真摯に取り組んだ結果であろう。
予防歯科にも力を入れている。衛生士用のチェアも本院、分院に2台ずつ備えて、デンタルフィットネスを行う。
「田舎はデンタルIQが低いという偏見がありますが、そういうことはありませんね。この10年でかなり高まりました。近江八幡に分院を出して3年ですが、これからはそちらの地域のデンタルIQを高めていかなくてはと思っています。子どもの治療に関して言えば、私どもでは敗戦処理をしているような感じです。15歳を越えたら虫歯なしに、20歳を過ぎたらぺリオで、という段階を踏んで、本当の8020が実現するのではないでしょうか。乳歯は神様が練習のためにくれた歯で、チャンスは2回あるということ、それから環境の維持によって虫歯を防ごうということを伝えています。」 |