奈良県では、「子どもを犯罪の被害から守る条例」が、平成17年6月県議会において可決され、平成17年7月1日に公布、同日(一部、平成17年10月1日から)施行されました。
制定の趣旨
 最近、子どもを狙った凶悪犯罪が多発しており、本県でも、平成16年11月17日に奈良市内で帰宅途中の小学1年生の女子児童が誘拐され、殺害されるという悲惨な事件が発生するなど、子どもを取り巻く治安情勢は非常に深刻な状況にあります。
 また、学校周辺や通学路等における児童の安全確保が重要視され、保護者、地域住民や学校関係者と警察官が連携した登下校時の「見守り活動」や、パトロール等の様々な防犯対策が、各地で、従来にも増して積極的に行われています。
 しかしながら、子どもが気に入るようなことを言って誘い込もうとしたり、嘘を言って近づいたりするなど「子どもに不安を与える事案」は、依然として多発しており、いつ、次の凶悪犯罪が発生するともしれません。
 そこで、子どもの安全を確保するための手立ての一つとして、この条例を制定しました。
条例の内容
 子ども(13歳未満の者)の生命又は身体に危害を及ぼす犯罪を未然に防止し、子どもの安全を確保するため、次の事柄について、定めています。
 なお、この条例の適用に当たっては、県民及び滞在者の自由と権利を不当に制限しないよう留意しなければならないこととしています。
1 県、県民及び事業者の責務
(1) 県は、子どもの安全を確保するために必要な施策を実施し、国及び市町村との連絡調整を緊密に行うよう努めること。
(2) 県民は、子どもの安全を確保するため、積極的に活動するとともに、県及び市町村が実施する施策に協力するよう努めること。
(3) 事業者は、子どもの安全を確保するため、積極的に活動するとともに、事業活動等に関し、県及び市町村が実施する施策に協力するよう努めること。
2 必要な施策
(1) 県は、市町村等と連携し、相互に協力して子どもの安全確保を推進するための体制の整備並びに市町村等が実施する施策及び活動に対して、必要な支援を行うよう努めること。
(2) 学校等を設置又は管理する者は、学校等の施設内において、子どもの安全を確保するよう努めること。
(3) 子どもが通学、通園等の用に供している道路及び日常的に利用している公園、広場等(以下「通学路等」という。)を設置又は管理する者は、子どもの安全を確保するため、当該施設の環境整備に努めること。
(4) 保護者等関係者は、通学路等における子どもの安全を確保するために必要な措置を講じるよう努めること。
3 子どもに対する犯罪を助長する行為の規制等
(1) 子どもに不安を与える行為の禁止(第11条)
道路、公園等のいわゆる「公共の場所」又は電車、バス等のいわゆる「公共の乗物」において、保護者等が監護できない等の状況にある子どもに対して、正当な理由なく、甘言を用いて惑わし、又は虚言を用いて欺くこと。
(2) 子どもを威迫する行為の禁止(第12条)
公共の場所又は公共の乗物において、保護者等が監護できない等の状況にある子どもに対して、正当な理由なく、次の行為を行うこと。
@ 言い掛かりをつけ、すごみ、又は卑わいな事項を告げること。
A 身体又は衣服等を捕らえ、進路に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
(3) 子どもポルノの所持等の禁止(第13条)
子どもを使用して作成されたポルノを所持し、又は保管すること。
上記の行為を禁止することとしたのは、子どもを狙った「略取及び誘拐」、「強制わいせつ」、「強姦」、「逮捕及び監禁」などの重要凶悪犯罪の多くが、これらの行為をきっかけとして行われていることからです。また、(1)の規定によって、日常行われている子どもに対する挨拶や見守り活動における声かけなどと、犯罪のきっかけとして行われる行為が明確に区別されることとなります。これにより、今後、県民の皆さんには安心して積極的に子ども見守り活動をしていただくことができ、活動がより一層活性化・活発化していくものと期待します。
(4) 禁止行為に係る通報(第14条)
@ (1)又は(2)の違反者を発見した者は、保護者等又は警察官に通報すること。通報を受けた保護者等は警察官に通報すること。
A (3)の違反者を発見した者は、警察官に通報すること。
4 罰則
(1) 3の(2)又は(3)の違反行為をした者に対しては、30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処すこと。
(2) 子どもポルノを所持し、又は保管している者が、自首したときは(1)の刑を減刑し、又は免除すること。
※3及び4については、10月1日からの施行です。
条例の概要