中国製ギョーザ中毒事件で、症状が最も重かった千葉県市川市の女児(5)は病院搬送時、手足に有機リン系中毒特有のけいれんが起きるなど生命が極めて危険な状態で3日ほど意識不明だったことが分かった。女児が入院する順天堂浦安病院(千葉県浦安市)の田中裕救命救急センター長と担当医の角由佳医師が6日に会見し明らかにした。女児の経過は順調でこの日、母親(47)と事件後初対面し、「頑張ったんだよ」と笑顔を見せたという。角医師は「1〜2週間で退院できる」との見通しを示した。
市川市の一家は1月22日、夕食にコープ市川店(市川市)で購入した「CO・OP手作り餃子」を食べ、女児のほか母親と他の子供3人が病院に搬送された。
症状が重かった女児は近くの浦安市川市民病院で血液検査の結果、「有機リン中毒の疑い」があるとして人工呼吸器と点滴の管を施され、翌1月23日午後、高度専門医療が可能な3次救急医療機関の順天堂浦安病院に搬送。「涙やよだれを流していた。唾液も多く、意識障害の度合いからも命にかかわる状態だった」(角医師)と一時は危ぶまれた。
意識はなく瞳孔も縮小。搬送時に36度だった体温は夜に40度近くまで上がり、脈拍も弱かった。角医師らは胃洗浄や消化器官の吸収を妨げる処置を行い、下剤を処方。点滴などの救急治療に力を尽くす。3日間は重篤な状態が続いたが、1週間で人工呼吸器が外れ、5日に集中治療室を出て一般の小児病棟に移った。
この日は、一時退院の許可を得た母親と対面。「お母さん、入院がんばったよ。会いたかった」と甘えた様子も見せた。病室では「雪やこんこ」と歌ったりアニメのビデオを見たりして笑顔で過ごしているという。
女児が重篤となった理由は低年齢のため体重も少なく、体に入った有機リンの割合が大きかったと推測できるという。
また同病院は、女児から採取した血液や尿を千葉県警に提出したことも明らかにした。
角医師は「歩行はまだ許可していないが、ベッドの上では起きて過ごし、立ったりもできる状態」と説明。有機リン系中毒は10日〜2週間で症状がぶり返す例もあるが「山は越えた。症状悪化はないだろう」とし、後遺症については「経過を診ないと分からない」と語った。母親と8〜18歳の子供3人も入院中だが快方に向かっている。
田中センター長と角医師は堺市のO157集団食中毒(平成8年)の際、阪大高度救命救急センターに勤務。当時の治療経験は今回の中毒症状の診察にも役立ったという。
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