男性も積極的に育児をしようという動きが広がっている。各地で父親教室が開かれたり、書店には男性向けの子育て関連本や雑誌が並ぶ。3月には“父親力”を問う検定試験もある。男性のみなさん、父親としての自分に自信がありますか。
「出産予定は6月下旬ですが、ミルク作りのイメージトレーニングはもう始めています」。ベビーフード大手の和光堂などが1月に東京都内で開いた「プレパパ教室」に参加した神奈川県相模原市の会社員、大川敦司(あつじ)さん(31)はそう話す。「妻が外出した時、一通りのことができるようになりたい。今日はミルクの適温の40度を肌で覚えようと参加した」
精神科医の明橋大二(あけはしだいじ)さん(48)が、育児中の妻とのコミュニケーションの在り方などを示した「忙しいパパのための子育てハッピーアドバイス」(1万年堂出版)は、出版から約3カ月で24万部のベストセラーだ。高校生の娘が2人いる明橋さんは、自身の反省を込めて書いたという。「今の若い男性は思っていた以上に意識が高い。しかし『どうしたらいいのか』が分からないのだろう」と話す。
「父親」をテーマにした雑誌も人気。季刊の父親情報誌「FQ JAPAN」(アクセスインターナショナル)は発行1周年を迎えた。ポプラ社は月刊学習雑誌「ポプラディア」の増刊号として「パパと子のコミュニケーションマガジン」をうたう「ポプラディア サムズ!」を昨秋刊行した。
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父親の子育てを支援する活動などを続けるNPO法人、ファザーリング・ジャパン(東京都)は、3月に「第1回子育てパパ力(ぢから)検定(略称・パパ検)」を実施する。
NPO代表理事の安藤哲也さん(45)は「企業や組織にぶら下がり家では妻に依存するばかり。子どもの誕生は、そんな男性が自立できるチャンス。子育ては義務ではなく、楽しい権利だと気付くきっかけにしてほしい」と検定の狙いを語る。
ただ、安藤さんは気掛かりなムードも感じるという。一つは「ファッションアイテムとしての子育て」。大型の外国製ベビーカーの人気が高まっているが「押している自分がどんな姿に見えるのかばかりを意識する親が多い。ベビーカーの外見を気にするなら、オムツの性能や食品の安全性にも同様に気を配るべきだ」。もう一つが「母親化する父親」。保育園で子どもがミルクを飲んだ時間を子細に尋ねて手帳に書き込んだり、オムツが取れるのが遅いと悩んだり。「母親向けの情報にしか接していないので、技術論に迷い込んでいる」
こうした点に配慮して、パパ検では子育て支援制度などに関する知識を問うと同時に、アニメや絵本、遊びなどの芸能・文化分野からも出題する。
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14年度までに育児休業取得率10%を目指す政府目標に対して、06年度の実績が0・57%にとどまるなど、現実にはまだまだ遅れている男性の子育て。各地で開かれる父親講座の講師を務めるNPO法人、新座子育てネットワーク(埼玉県新座市)の佐野育子さんは、夫に不満を持つ妻に対しても「本音では子育てしたいのに、社会や企業の状況に阻まれている男性は多い。責めるだけでなく、温かく応援して」とアドバイスする。【丹野恒一】
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■子育てパパ力検定
日時 3月16日
会場 東京都、名古屋市、大阪市、岡山県倉敷市、広島市、新潟市、新潟県長岡市
検定料 3900円(夫婦・ペア割引7000円)
出題形式 マークシートによる4者択一方式で50問、50点満点
認定基準 合否ではなく、点数に応じて▽スーパーパパ(41点以上)▽ナイスパパ(40~26点)▽チャレンジパパ(25~11点)▽ドキドキパパ(10点以下)の4段階で認定
申し込み締め切り 2月12日
問い合わせ 03・3233・4808(パパ検運営事務局)
公式サイト http://www.kentei-uketsuke.com/papaken.html
毎日新聞 2008年2月7日 東京朝刊