歌舞伎界の大物・市川團十郎(61)が55年にわたる芸能生活で初めて、科学番組のナビゲーターを務めることが6日、明らかになった。ナビゲーターを務めるのはBSジャパンの開局7周年記念番組「THE MOON〜人類の夢・月世界の未来〜」(3月8日、後9・00)。團十郎は現在、NASAなどを取材するためにアメリカに滞在中。芸能界随一の天文学の知識を遺憾なく発揮することになりそうだ。
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小学生のときに屈折望遠鏡を、高校生では反対式天体望遠鏡を手に入れ、空を見つめていた。歌舞伎役者になってからも、熱が冷めることはなかった。月の石を見るため大阪万博に通い、岡山天文台の館長を訪ね、庭で海老蔵ら子供たちと夜空を見ながら、果てしなく広がる宇宙への思いを強くした。その團十郎にとっては、まさに念願の仕事だった。
番組は、月探査衛星「かぐや」や月の資源、月への移住の可能性など、月研究の最先端を追ったドキュメント。昨年夏に出演のオファーを受けた團十郎は「ぜひやりたい」と快諾。自ら申し出て、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の筑波研究所や相模原など国内の施設を訪れた。さらには「世界の最先端を伝えたい」と米・ジョンソン宇宙センター、スミソニアン航空宇宙博物館など10日間にわたる取材も敢行した。
團十郎は、取材先の専門家も舌を巻く豊富な知識を披露。宇宙服の取材では、日本の組みひもの技術が使われていることを知り「科学と文化の融合が大切」と技術者と意気投合していたという。
白血病で入院していたときにも「外出許可時にはお茶の水へ行って、宇宙の本を買ってきた」というほどのマニア。「もう少し若かったら宇宙に行けたのに。大航海時代に似た時代が来る。もうすぐスターウォーズの世界が目の前に来るだろう」と團十郎。視聴者に宇宙の魅力を伝えるべく気合をみなぎらせていた。