ホーム > きょうの時鐘


2008年2月7日

 外航の日本人船員と日本籍船が激減しているため、政府がようやく対応策に本腰を入れ始めた。海上運送法を改正し、日本人船員と日本籍船を増やす外航海運会社の法人税を減税する措置などを導入する方針という。一部の企業だけを対象にした優遇税制に疑問を呈する向きもあろうが、安全保障の観点から理解したい。  国内の外航海運会社の船員は、人件費の安い外国人に極度に依存しており、一九七四年のピーク時で約五万七千人を数えた日本人船員は、〇六年で約二千六百人と大幅に減少している。海上輸送に従事する日本商船の船員の90%以上は外国人という状況なのである。さらに、所有船舶のほとんどはコストのかからない外国に登録され、〇六年で約二千二百隻の船舶のうち、日本籍はわずか九十五隻に過ぎないという。  合理的な経営を追求した結果とはいえ、海洋国家としては大変心もとない状況である。エネルギー資源と食糧の大部分を輸入に頼る日本にとって、海上輸送の安定は死活的に重要であり、経済だけでなく安全保障の問題としてとらえる必要がある。いざというとき、外国籍の船舶を日本籍に移すことは比較的短期にできるとしても、日本人船員の養成、確保は一朝一夕にはいかない。  自国の船員と船舶の確保を安全保障の視点で考えることは、国際的な常識といえ、例えば韓国は「国家必須船舶制度」を導入している。国家非常時に備えて、国民経済や防衛に重大な影響を及ぼす物資を輸送する船舶を国家必須船舶に指定する。その船員は韓国人に限定し、外国人船員との給与の差額を国が補助する制度である。米国なども自国商船に対する助成制度を設けている。  今回の海上運送法改正で、海運会社の法人税の課税方式を見直し、船舶の貨物積載能力に応じて課税する「トン数標準税制」を導入する予定である。これは海運に力を入れる欧米主要国が採用している課税方式であり、海運会社の国際競争力を維持するとともに自国籍船舶を増やす契機になろう。日本人船員の激減ぶりに、このままでは「絶滅」してしまうという声すら聞かれる。そうした事態に至らぬ真剣な努力を政府、海運会社に求めたい。


ホームへ