社 説

低炭素社会/排出削減の流れ、より太く

 財団法人日本環境協会に事務局を置く「全国地球温暖化防止活動推進センター」が9、10の両日、都内で「ストップ温暖化『一村一品』大作戦」と銘打った全国大会を開く。

 都道府県代表が「自然エネルギー」「省エネルギー」「交通・輸送」など大きく5つの分野で活動を競う初の集い。知恵の交換と相互啓発を、一層の機運の盛り上げにつなげてほしい。

 実際、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減に向けた自治体や市民団体の取り組みが活発化し始めている。

 異常気象の要因とされる温暖化への危機感と、原油高騰を受けた省エネ・省資源推進の流れが背景にある。環境重視の世論の高まりとも無縁ではない。

 横浜市は、2025年度までに市民1人が1年間に排出する温室効果ガスを04年度比で30%削減する目標を設定し、新年度予算案に対策費など約11億円を計上した。

 高効率ソーラーシステムを導入する住宅への助成制度を新設し、排出したCO2を植林や自然エネルギー事業への投資などで相殺する「カーボンオフセット」の導入も検討する。
 4月には、50人規模の温暖化対策事業本部を設ける。

 東京都は、大規模事業所を対象にした排出削減の義務化や排出権取引制度の創設を図る方針。環境税の導入も検討する。

 名古屋市は、建材製造に伴う排出量が鉄筋コンクリートに比べて格段に少ない木造の市営住宅建設計画を進める。

 和歌山市の民間非営利団体は、自力で3カ所に小型の風力・太陽光発電施設を設置。防犯灯などの電力を賄っている。

 盛岡市は、市民らと協働。自転車で走りやすい街づくりを進め、“車離れ”を促す。

 いずれも意欲的だが、取り組みは大半、始まったばかりで、規模も多くは小粒だ。新エネルギーを軸に据えた地域づくりを推進、風力を中心に電力自給率185%を誇る岩手県葛巻町のようなケースはまれだ。

 その分、それぞれの効果は限られる。ただ、先の大会などを機に削減の流れを太くし、活動を面に広げていくことで、うねりを起こすことはできる。

 結果、背を押された国の取り組みが力強さを増し、排出量の多い産業界や事業所も消極姿勢の転換を迫られよう。

 温暖化対策は、環境と経済の両立に英知を集め、永続的な社会をつくる営みそのものだ。

 市民にとっては、サービス業の24時間営業といった、過剰にも映る利便性を問い直す側面もある。

 公共交通の利用や消費財の「地産地消」を心掛けるなど、生活全般を見つめ、真の豊かさを考える、ということだ。

 環境時代のビジネスモデルの再構築とライフスタイルの総点検を通じた、地球に優しい経済・社会の創造でもあるわけだ。

 CO2排出を抑えながら発展する「低炭素社会」。その実現に向けた試みは、大量に排出する先進国に住む地球市民としての責務と同時に、持続可能な社会への投資と受け止めたい。
2008年02月06日水曜日