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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
Shoot it ! - #025 最新のゲーマー用液晶ディスプレイを試す
4月5日
ゲーム用液晶ディスプレイを試す
 Shoot it! 第21回で液晶ディスプレイの話をした。現在の液晶ディスプレイ市場は大画面化とコストダウンに傾倒しているが、Eスポーツ選手にとってまだまだ満足できるレベルではない。開発に携わる方々はもっと基本スペックを向上させるため頑張ってほしい、という主旨だった。その記事をお読み頂いたアイ・オー・データ機器のディスプレイ担当、太田さんからご連絡を頂き、コアゲーマー向け液晶ディスプレイを貸して頂いた。

 お借りした液晶ディスプレイはふたつ。22型ワイド液晶ディスプレイを搭載したLCD-AD221XWと、24.1型ワイド液晶ディスプレイを搭載したLCD-TV241XBR-2だ。LCD-AD221XWはPC用ディスプレイモニタで、アナログ入力端子(D-Sub15)とデジタル入力端子(DVI-D)を装備している。AV入力などゲーム機やDVDプレーヤーの接続はできないが、これは別売のTVチューナーBOXを加えることで対応できる。ほかに3W+3Wのスピーカーを搭載。応答速度は5msとかなり速く、国産メーカー製としては最速の部類に入る。一方、LCD-TV241XBR-2は多目的モデルで、アナログTVチューナーを搭載。D4入力端子やAV入力用のRCA端子、S端子のほか、デジタル放送向けHDCP対応DVI-D端子もある。スピーカーは2.5W+2.5W。カタログではXbox 360やWiiにも対応しているとあり、PC以外の映像ソースを楽しむならこちらが良さそうだ。応答速度は中間色で6ms、黒−白−黒で16msとなっている。中間色が速い理由はオーバードライブ回路を搭載しているからである。

 ちなみに私の普段のゲーム環境は19インチCRTモニタだ。仕事用には同サイズの液晶モニタを使っているけれど、応答速度は25msでゲームには厳しい。3D射撃ゲームで動きの激しい場面になると建物の上下がズレて見えることがある。小さな的に照準が定めにくい。だから仕事用にと割り切って使っている。そこで、今回はCRTの性能にどこまで近づいているか、25msの液晶ディスプレイよりどのくらい改善されたか、このふたつの点を確認したい。

 遊び慣れたゲームのほうが比較しやすいので、今回はBattleField2142とQuake4、Counter-Strike、Counter-Strike Source、Half-Life Sourceで遊んでみた。どれも対戦射撃アクションゲームである。照準に敵の姿を捉えて撃つという、ミリ単位の誤差が反映される。また、画面全体が激しく動くため、残像の多い画像になると酷く目が疲れることになる。

 始めにPC用、応答速度5msのLCD-AD221XWを接続した。驚いた。CRTディスプレイの描画とほとんど区別が付かない。少なくとも私の技量ではストレスを感じることなくプレイできる。BattleField2142とQuake4は元々4:3の画面サイズだ。このモニタは4:3の表示モードも設定できるので、ゲーム画面を正しく再現するなら4:3の縦横比をキープできる。しかし、ワイドスクリーンに拡大表示しても面白く、広々感も良かった。Counter-Strike、Counter-Strike Source、Half-Life Sourceはゲームのオプションとして16:9の解像度をサポートしている。どちらでもプレイしたけれど、もちろんまったく問題ない。残像もなく、目が疲れることはなかった。

 次に多目的タイプで応答速度中間色6msのLCD-TV241XBR-2。画面がひとまわり大きくなったので迫力が増す。こちらも4:3、16:9の両方で各ゲームをプレイ。テストのつもりが本気で遊んでしまう。そしてこちらも残像、プレなどまったくなし。むしろCRTよりもよく当たる。普段の環境より大画面ということもあり、私にとってはCRTよりも遊びやすかった。目も疲れない。遊ぶほどワイド液晶ディスプレイが欲しくなってきた。

(左)LCD-AD221XW:PC用途に特化した機種。応答速度5ms、(右)LCD-TV241XBR-2:多目的な用途に使える機種。応答速度6ms

 液晶ディスプレイはここまで良くなったのか。これが正直な感想だ。しかしこれは私の技量が人並みだから及第点を出せたとも言える。Eスポーツプレーヤーの達人たちは、これでもまだ満足できないのだろう。彼らの視力は恐ろしい。はたして液晶はEスポーツプレイヤーの要求に応えられるようになるのだろうか。今後、応答速度はどこまで速くなるのだろう。実際に開発に携わる太田氏に聞いてみた。すると、意外な答えが返ってきた。

「液晶パネルの反応速度は最速で2msです。しかし、液晶の応答速度はこれ以上速くなることはないと思います。現在の(8msや5msなどの)スペックで、残像やノイズなどの問題は充分クリアできているからです。Eスポーツプレイヤーが求める応答速度とは、実は液晶パネルの速度ではなく、“遅延”と呼ばれる別の問題であると認識しています」

 遅延とはなにか。これは液晶ディスプレイの構造上の問題だ。液晶ディスプレイは外部の機器から入力された映像信号を1画面分いったん蓄積、映像回路が画像を分析したのち、画素となる液晶シャッターのひとつひとつに信号が送られる。そして液晶シャッターが開度を調節して映像を表現する。映像回路は液晶ディスプレイにとって必須の回路だ。しかし、この映像回路が遅延の原因となってしまう。

 一方、CRTディスプレイは受け取った入力信号を蓄えることはせず、そのまま電子銃に伝える仕組みだ。ブラウン式テレビでも大型の高級タイプでは映像回路を入れて美しさを引き立てるタイプもあるけれど、PC用のCRTでは映像回路はおかない。絵作りはグラフィックボードが行うからだ。つまり、CRTは映像回路が無く、遅延はゼロになる。

 液晶ディスプレイでは、液晶パネルのシャッター応答時間が向上したとしても、映像回路がスマートでなければ遅延が発生する。現在の映像回路は、性能の良いものでも1フレーム程度の遅延があるという。設計やチューニングを怠れば、2フレーム以上の遅延もあり得る。また、より美しい映像にこだわったり、動画を滑らかに表示するために、フレームとフレームの間に自動的に中間フレームを生成するなどの複雑な処理をさせると、さらに遅延が大きくなる。ところが遅延に関して性能数値を公表しているメーカーは少ない。映像を見るだけなら遅延は問題にならない。ビデオデッキから送られた瞬間と、画面の映像との時差が1/60秒あったとしても、試聴には差し支えないからだ。

 しかし、ゲームはそれでは困る。こちらの操作が映像に反映されるからだ。1フレーム前の標的に向けて銃を撃っても、実はすでにそこには誰もいなかった、ということになるからである。液晶だと当たらない。動作が遅れる。そう感じる理由はシャッター反応速度ではなく、映像回路のほうにある。映像回路がきちんと作られていなければ、遅延が大きくなってしまう。

 また、これは私の予想だが、PC用ディスプレイは映像回路がシンプルで遅延は少なく、画質重視の液晶テレビは映像回路が複雑で遅延が起こりやすいとも言えそうだ。しかし確かめようにも、液晶テレビ、液晶ディスプレイのメーカーは遅延についてカタログ等で公表していない。唯一の手がかりはカタログ上で“ゲームモード”など、ゲーマーを意識した記述があるか否かだ。ゲーマーを意識した液晶テレビや液晶ディスプレイは、映像回路のうち、画質向上のための機能をカットして遅延解消を目指しているらしい。

 遅延はゲーマー用液晶ディスプレイにとって排除すべき課題だ。そこで太田さんに質問を投げてみた。アイ・オー・データ機器では、遅延を低減するための特別な技術開発は行っているのだろうか。

「現在は、回路パターンの拘りやノイズ除去のような泥臭い作業を根気よくやっているわけです。いわば当たり前のことをやっています。しかし、この作業を怠ると予想外な弊害(遅延の原因等)が発生する可能性があります。だから量産が始まるまでギリギリの調整が続きます。液晶ではこの先、劇的な技術革新を望めません。小さいアイデアの積み重ねで課題が少しずつ改善されていくと思います」(太田氏)

 恥ずかしながら、私は今まで液晶ディスプレイの性能は応答速度だけで決まると思っていた。しかし、応答速度が十分に速くなったいま、重要な要素は“遅延”だ。これはカタログ等で公開してもらわなくては購入時の比較検討ができない。ゲーム用に液晶ディスプレイを買うなら、映像回路と遅延についてきちんと認識し、対策を行っているメーカーや機種を選びたい。美しい映像か遅延の低減か、という二者択一なら、Eスポーツプレイヤーは間違いなく遅延低減を選ぶだろう。
(杉山淳一@RBB)
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