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発信箱:優秀な人材とは=与良正男(論説室)

 公務員制度改革が課題になっている折、霞が関の官僚の人々と、これをテーマに話をする機会が増えた。おしなべて幹部は現状に強い危機感を持っている。しかし、それは今の制度の弊害といった話ではない。「このままでは優秀な人が官庁に来なくなる」という危機感なのだ。

 「では優秀な人材とは」と問えば、結局、「東大のトップクラス」のようである。それが今、外資系企業などに流れているのは、エリートコースを歩いてきた幹部からすれば自分の人生を否定された気になるのかもしれない。

 嫌みを言いたいのではない。今の改革論議には、そもそも公務員にはどんな人材が必要かという原点の議論が欠けていると思うからだ。

 若いキャリア官僚と話をすると、ワインのうんちくはとうとうと語り、IT知識なども豊富だが、「国益」といった話になると途端に口ごもってしまう人が案外多いのである。彼らは高学歴だが、果たして官僚として有能か。それが危機ではないのか。

 首相の私的懇談会が打ち出したキャリア制度の廃止や、縦割り行政を改めるために人事を内閣に一元化するといった方向は間違っていないと思う。でも、まず、あるべき公務員像を確認することだ。

 極論すれば政治家さえしっかりしていれば、公務員は悪いことさえしなければいいという発想だってある。でも政治の現実がそうでない以上、一定のエリートは必要という人も多かろう。ならば高い理想を持った官僚を育てる仕組みを作ることだ。そんな人ならもっと高い給与を払っても私は文句を言わない。

毎日新聞 2008年2月7日 0時03分

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