社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

社説:道路論戦 さあ、民主党の出番がきた

 補正予算の成立を受け、国会ではきょうから08年度本予算案の審議が始まる。焦点は道路問題だ。

 民主党がいきり立って「ガソリン代値下げ」を叫び、与党が問答無用の「つなぎ法案」で対抗する国会序盤の異常な緊張は、衆参両院議長のあっせんによって、ひとまず沈静化した。

 ガソリン代の値下げ論は、本則に基づく税額(1リットル当たり28.7円)に上乗せした暫定税額(同25.1円)の根拠法が3月末で期限切れとなることに目をつけた小沢民主党の国会戦術だった。

 しかし、道路問題の核心部分は、ガソリン税を道路以外に使わせない現行の特定財源制度をなお維持するのかどうか、さらに同財源に基づく道路整備計画が妥当かどうかである。

 道路特定財源の一般財源化を求めてきた民主党は、今こそ真正面から政府・与党に論戦を挑み、道路行政を徹底的に検証すべきだ。

 小泉政権時代の民主党は、道路改革論議でほとんど出る幕がなかった。当時の小泉純一郎首相が自民党道路族に「抵抗勢力」のレッテルを張り、自民党内だけで「与野党攻防」を演じてきたためだ。

 今は違う。福田政権下の自民党はこと道路に関する限り、「改革」のポーズすらかなぐり捨て、がむしゃらに道路予算を死守しようとしている。冬柴鉄三国土交通相を送り出している公明党も同様だ。その集大成が、昨年12月に政府が決めた向こう10年間の道路整備中期計画である。

 税収の使い道を道路整備に限る道路特定財源の下では、政策的な競争原理が働きにくい。集めた税金をいったん道路整備特別会計に入れてしまえば、福祉や教育の予算がいくら不足していようとも、せっせと道路造りに回される。

 小泉内閣は05年12月に一般財源化を図る目標を打ち立てたものの、安倍内閣では「真に必要な道路整備は計画的に進める」に後退する。さらに福田内閣の道路整備中期計画にいたって、道路族は完全復活を果たしたかのようだ。

 政府・与党は、毎年度の道路歳出を上回る税収は一般財源化すると説明してきた。しかし、それすら怪しいことが分かってきた。5日の参院予算委での政府側答弁によると、余剰分は翌年度の道路整備費に繰り越されるだけだという。

 10年間で59兆円も道路につぎ込む中期計画の積算根拠は何か。「真に必要な道路」をだれがどんな基準で決めるのか。なぜ民営化した道路会社の高速料金を税金で引き下げる必要があるのか。論点はいくらでもある。

 審議を通して政府側が立ち往生したら、民主党は堂々と修正協議に持ち込めばいい。25.1円の値下げにこだわるよりも、よほど政権交代に向けた確かな一歩になるはずだ。

毎日新聞 2008年2月7日 0時07分

社説 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報