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クローズアップ2008:中国製ギョーザ(その2止) 対中関係、政府に難題

 ◇「改善」足踏みを懸念

 中国製ギョーザの中毒事件をどう処理するかは日中関係の再構築をテーマとする「福田外交」にとって難題となった。消費者重視を掲げる福田政権として真相究明を迫られる一方で、改善に動く両国関係へのダメージをどう食い止めるか。福田康夫首相の手腕が試される局面となった。

 町村信孝官房長官は1日の会見で、中国政府の反応について「大変スピーディーな対応をしている」と評価。「彼ら自身も北京五輪を控え心配しているのだろう」と指摘した。

 胡錦濤主席来日や北京五輪を控え、日中両政府は外交問題化を避けようというスタンスで一致している。高村正彦外相が31日、来日中の何亜非(かあひ)・中国外務次官補に原因究明と再発防止に向けた努力を要請。何氏も「中国政府は原因の徹底究明を指示した。捜査当局も動いている」と表明した。中国側の調査チーム派遣を日本政府は受け入れる方針だ。

 一方で工場の調査や両国の捜査協力には限界があり、政府の取り組みを危ぶむ見方もある。1日の参院予算委員会で植松恵美子氏(民主)は「隣国と摩擦を起こしてはいけないというが、国民の命にかかわる問題」と舛添要一厚生労働相に日本側が製造工場を調査できないかをただした。舛添厚労相は「中国主権の下で日本の公務員はできない」と答えるにとどまった。

 こうした難しさは捜査にもある。日中両国は昨年12月の外相会談時に日中刑事共助条約に署名したが、国会承認が済んでいない。高村外相は「今国会でやりたい。条約があれば外交ルートを通じないで捜査当局同士でできる」と述べ、承認を急ぐ考えを示したが、今回の事件への対応を巡り外務省幹部は「間に合わない」と語る。

 今回の事件は、原因究明をめぐり、靖国神社参拝問題やサッカー試合でのブーイングでかつて深刻化した日中両国の国民感情の対立に発展する懸念もある。8月に北京五輪を控え、この点も政府の懸念材料となっている。【上野央絵】

毎日新聞 2008年2月2日 東京朝刊

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