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社説(2008年2月5日朝刊)

[代理出産問題]

原則・例外の条件整理を

 病気で子宮を失うなどして妊娠出産できない女性に代わって、別の女性が子どもを産む「代理出産」をめぐる議論がヤマ場に差し掛かっている。

 法務、厚生労働両省から検討を依頼された日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」が、代理出産を原則禁止とする報告書案に大筋で合意した。今月中にも報告書を発表する。

 妊娠出産の危険を第三者の女性が負うことや、生まれてくる子どもの健康や心に与える影響などの問題点を重視した。

 処罰の対象を営利目的の事例に限定し、依頼者と医師、あっせん者(国外犯を含む)を罰するが、代理母は対象から外した。しかし、一方では国の厳格な管理の下での代理出産の「試行」が盛り込まれるなど、一部容認と受け取れる表現もある。

 論理的な矛盾も見られ、方向性が明確ではない。賛否の立場から激しい議論があったことがうかがえ、問題点をさらに整理していく必要がある。

 代理出産について、厚労省の厚生科学審議会部会は二〇〇三年に罰則付き禁止を打ち出し、日本産婦人科学会も会告で禁止を決定していた。

 この問題は、向井亜紀さん夫妻が米国人代理母に双子を出産してもらったことも新たな契機になった。

 向井さんの嫡出子出生届の不受理をめぐって、東京高裁は向井さんを母とする判断を示したが、最高裁は高裁決定を破棄し、出産した女性を母とする決定を下した。

 最高裁は、代理出産という民法の想定していない事態が生じており、医療法制、親子法制の両面からの検討が必要と指摘。立法による速やかな対応を促していた。

 代理出産の問題をめぐっては世論も大きく動いている。厚労省が昨年実施した国民意識調査では代理出産の容認派が54%と半数を超え、一九九九年、二〇〇三年調査の43%を上回った。

 代理出産には、夫の精子を使って妻以外の第三者の女性に妊娠出産してもらう「代理母」と、夫婦の受精卵を代理母の子宮に移植する「借り腹」の二種類がある。

 病気で子宮をなくしたりして子どもを産めない女性にとって、代理出産は「最後の選択肢」である。生殖補助医療が著しく進展した今、少なくとも借り腹については検討の余地があるのではないか。こうした女性たちの願いを法律で全面的に封じるべきではない。

 代理出産の原則禁止は現時点ではやむを得ないだろう。その上で例外の許容条件を厳しく吟味し、問題点をさらに整理していく必要がある。



社説(2008年2月5日朝刊)

[プロ野球キャンプ]

環境整備は欠かせない

 プロ野球の春季キャンプが始まった。今年は日本プロ野球全十二球団中、過去最多の九球団が沖縄に集結。韓国三球団を含め十二球団が沖縄で、公式戦に向けて戦力アップを図る。

 各選手がけがもなく順調にキャンプをこなし、昨季のように今季も、沖縄キャンプを張った球団同士の日本シリーズ決戦が見られることを多くのファンは期待しているだろう。

 沖縄はほどほどに温暖で雪が降らず、本拠地との寒暖の差が小さいことが魅力の一つだ。海外のキャンプ地だと日本との気候の差がありすぎて、帰国後、選手がけがをしかねない。

 難点は雨が多いこと。今年は初日から雨天練習場スタートの球団がいくつかあった。石垣島は今年、千葉ロッテマリーンズを迎えて沸いているが、一九八三年には中日ドラゴンズに一年で撤退された苦い経験がある。連日の雨天で練習に支障が生じたのだ。

 昨春、翁長雄志那覇市長が読売巨人軍の球団事務所を訪ね、二〇一一年に完成予定の市営奥武山野球場(仮称)での春季キャンプ実施を要請した。席上、清武英利球団代表らは沖縄が多雨であることに懸念を表明した。

 天候ばかりは地域の情熱だけではいかんともしがたいが、清武代表らも言及した、近接する施設の整備はしっかりやらねばなるまい。今はドーム型の練習場もあり、雨が多いハンディはかなり克服できてはいる。雨が降って練習が休みでは、県外からキャンプを見に訪れた観光客にも申し訳ない。

 プロ野球キャンプがもたらす効果は直接間接の経済効果だけでなく、子どもたちに夢を与えるという教育効果も大きい。各球団は各地の協力会や友の会とも連携して野球教室などを開催しており、子どもたちの健全育成、キャンプ地を提供している地域へのお礼も込めた貢献と評価したい。

 そんな球団もやはりプロの集団。戦力強化に向いた、ほかにいいキャンプ地があれば、心変わりするのは当然だろう。雨天対策を含め、練習環境の整備・充実は欠かせない。


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