「CO・OP」ブランドの信頼が揺らいでいる。消費者が被害に遭った中国製冷凍ギョーザによる中毒事件3件のうち、2件は生協の商品で、3日にも有機リン系殺虫剤メタミドホスが微量ながら検出され対応に追われた。各生協の職員は宅配先に「おわび行脚」を続ける。昨年の北海道・ミートホープ社の牛ミンチ偽装事件で自主回収に苦しんだ教訓は生きなかったのか。
「気味が悪いから持ってってよ」。埼玉県川口市。玄関先で、生協「さいたまコープ」の配達員、坂本健次さん(33)は、組合員女性(60)から未開封の冷凍食品1袋を押しつけられた。数日前に配達した回収対象ではない商品だ。「ご迷惑を掛けて申し訳ありません」。頭を下げ、おわびの文書を渡す。
「最近の生協はおかしいわ」。この女性は嘆く。食品添加物の追放を訴える姿勢に共感し、30年前に組合員となった。「今回の事件も去年のミートホープの偽装事件も、昔ならあり得なかった」
昨年6月、偽装牛ミンチの使用が発覚、冷凍コロッケなどを自主回収した。「あの一件を反省し、残留農薬検査を厳しくし、原材料の産地まで調べるようにしていたのだが……」。日本生活協同組合連合会(東京都渋谷区、499団体加盟)の飯村彰常務は苦渋の表情を浮かべる。
扱う中国産や中国の具材を使った商品は267品目に上り、食品全体の4%になる。中国製冷凍ギョーザは、本場中国の手作りで低価格に魅力を感じて販売を決めた。
問題の冷凍ギョーザを製造した天洋食品の製品は、関東の1都7県の生協で組織する「コープネット事業連合」(さいたま市)など、大手生協を中心に全国で販売されている。
残留農薬を厳密に調べるため、製品でなく原材料を日本に取り寄せて調べてきた。また、工場が適切に稼働しているか、発売開始1年前の01年以後10回、現地に職員を派遣したが、事件は防げなかった。「故意に毒物を入れられたとすれば、抜き取り検査では防ぎようがない」。飯村常務は顔をゆがませた。
日本生活協同組合連合会の相談窓口には、1月30日から3日までに1万1500件超の苦情電話があった。回線不足で対応できなかった分も含めると20万件を超える。【桐野耕一、吉井理記】
◇「食の安全・心配御無用!」の著者で、生協の仕入れを長く務めた渡辺宏さんの話
日本生協連は今や巨大商社。今回の中毒事件で分かるように、外部メーカーに製造委託したものにコープマークをつけて売っていると言っていい。質も値段も普通のスーパーで売られているものと一緒と考えるべきだ。
◇エフコープに苦情など350件
九州最大の組合員数(約44万8100人)のエフコープ生活協同組合(本部・福岡県篠栗町)では、ギョーザの中毒事件発覚後の最初の週末となった今月2日、組合員からの問い合わせの電話が1日で約350件にのぼった。「他の中国産の食品は大丈夫か」といった質問や「コープだから信頼していた。もうちょっとしっかりやってほしい」という苦情が相次いでいるという。
エフコープ広報部は「ミートホープ事件以降、信頼回復に向けて検査体制の確立を進めていたが、ギョーザ事件で再び信頼を裏切る結果になってしまった」と話す。今週中にも配達の機会を利用し全組合員に向けておわびの文書を送る予定だ。【桐山友一】
毎日新聞 2008年2月4日 西部夕刊