東京都や大阪府などで「ベッドが満床」や「処置中」を理由に救急の受け入れ不能≠ェ相次いでいることに関し、入院治療を必要とする重症患者を受け入れる救急医療機関(第二次救急医療機関)が、1997年からの10年間で191減っていることが厚生労働省のまとめで明らかになった。第二次救急医療機関が減少していることに伴って、第三次救急医療機関である救命救急センターに患者が流れ、「最後の砦(とりで)となる三次救急≠ノ過度の負担が掛かっている」という問題点が指摘されている。
救急医療は、入院治療の必要がなく外来で対処できる患者に対応し、市町村が整備の責務を負う「初期救急医療」▽入院治療を必要とする重症患者を受け入れ、都道府県が定めた医療圏域に整備される「二次救急医療」(第二次救急医療機関)▽二次救急医療では対応できない複数の診療科にわたる処置を要するか、重篤な患者を受け入れる「三次救急医療」(第三次救急医療機関=救命救急センター・高度救命救急センター)という3つの段階で構成されている。
現在の救急医療体制に関しては、厚生労働省が「救急医療の今後のあり方に関する検討会」(今年1月末)に提出した資料によると、第二次救急医療機関は、97年には全国に3,344あったが、減少傾向をたどって07年には191減り3,153になっている。特に、東京都では97年の429が07年には266と大幅減。福岡県でも337から299、神奈川県も210から171と、主に大都市圏での減少割合が高くなっていた。一方、第三次救急医療機関は97年の136から07年には201へと増加している。
救急医療をめぐっては、各種報道のほか、昨年から今年にかけて救急搬送に時間を要した事案として、大阪府や東京都などで起きた8例が同検討会でも報告されている。具体的には、大阪府の富田林市で昨年12月、89歳の女性が府内の30医療機関で受け入れられず、搬送先の決定までに約1時間半を要し、市外の病院で死亡▽東大阪市で今年1月、交通事故に遭った49歳の男性が5つの第三次医療機関で受け入れられずに死亡▽東京都清瀬市で今年1月、95歳の女性が市内外の11機関で受け入れられずに死亡−などとなっている。
このような実態に対しては、開会中の通常国会でも取り上げられている。2月4日の参議院予算委員会では山下芳生議員(日本共産党)が「東大阪市の事案を現地調査した結果、いずれも第3次救急医療機関である5つの救命救急センターが、すべて『処置中』か『満床』で患者を受け入れられなかった」と指摘。第二次救急医療機関の減少に伴って患者が第三次医療機関に流れ、常に「処置中」「満床」に近い状況に陥っているという問題点を挙げている。
また、昨年12月の検討会でも救急医療の現状をめぐっては「二次救急医療機関が十分に機能しておらず、そのために三次の救命救急センターに過度な負担が掛かっている」・「二次医療機関の機能の低下は、医療訴訟や収益の悪さが背景にあり、診(み)れば診るほどリスクと赤字が増える」・「救命救急センターが機能するためには、二次救急医療機関の充実が欠かせない。その手当てが必要」といった意見が出されている。
このような救急医療の現実を踏まえ、香川県の関係者は「医療機関が救急を断る一番の原因は、ベッドが満床だったり、マンパワー不足で責任を持った診療を提供できないことにある。どんな時でも、救急を受け入れることは大幅な医師数の増加なくしては達成不可能だ。救急体制を整備するのは行政の仕事であり、搬送先を見つけることができないような貧弱な実態から、受け入れが可能となるような政策転換が必要」と話している。
更新:2008/02/05 16:22 キャリアブレイン
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08/01/25配信
高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。