第11回 ハズレをつかむ快感
糸井 つまり、さんまさんが
望んでやってることのほとんどは、
ハズレくじをつかんでるという
時間なんじゃないですかね。
さんま ああ、はい、はい。
糸井 動物もののドキュメンタリーを見るのも、
スペインのサッカーを見るのも、
手でこう、くじをつかんで、ハズレを引いて、
何回も何回もハズレを引いて、
やっと当たりを見つけたい、みたいなことで。
さんま そうそうそうそう。
だからね、宝探しとか好きなんですよ。
オパール探しとか、砂金とか、
すっごい好きですね。
あの、ハズレをつかむ快感というか‥‥。
糸井 うん、うん。
さんま はい。いやもう、絶対ぼく、そうですね。
あの、そこを楽しみたいと思って生きてる。
糸井 はい、はい。
さんま だから、ダメなのに追い続ける。
さっき出てきた
『ロードランナー』じゃないですけどね、
あれに出てくるコヨーテの生き様に
心打たれたりするのは、そこなんでしょうね。
追いかけて行って、ダメなときのほうが、
やっぱり、楽しいですね。
糸井 ハズレのほうこそ愛おしい、みたいな。
さんま はい。あの、だから、
ギャンブルなんかでも、調子いいときは
もう勝手に(勝ちが)来るんで、
おもしろくないんですよ。
糸井 ああ、はい。
さんま ダメなときにどう打つか、っていうほうが、
やっぱり楽しいですね。
糸井 なるほどね。
さんま 「負けたわ、今日は」って言いながらね、
「‥‥でもほんとうは、
 もっと(負け分が)行ってたな」って
思うときのほうが、勝った感があるんですよ。
糸井 あと、負けたんだけども、
拍手を送りたくなるような手で負けて、
「おまえ、それをやったの?」っていう
ときなんかはうれしいですよね。
さんま それはありますね。
「あ、こうやったか」っていうね。
糸井 そうなんですよねぇ。
さんま だから、競馬なんかでも、
昔の騎手の福永(洋一)さんなんかがね、
人気のない、ダメな馬を、
バーンっと行かすのがすっごい好きでしたね。
糸井 なんでしょうね、そういうのってね。
さんま なんなんでしょうね。
もう、「だめもと」で「いてまえ」が
やっぱり、好きなんですよね。
糸井 なるほど、なるほど。
さんま だから、あの、マラソンで、
完走目的で走る人の気持ちは
ぼくにはわからない。
糸井 勝負だから。
さんま 勝負ですから。
たとえ、5時間くらいかかる人でもね、
「しかけろ」と。
糸井 (笑)
さんま 競技なら、しかけろと。とにかく。
しかけろというか、あの、
しかけてほしいんですよ。
糸井 うん(笑)。
さんま ほんとうに健康のために、
ただ趣味でやってらっしゃる方は別ですよ。
でも、競技に出て、
「1位になったら金メダルですよ」
っていうなら、やっぱりね。
糸井 しかけろと。
さんま そういうほうが、
マラソンがおもしろくなるなぁと
思いますね。
糸井 しかけてハズレてもいいから。
さんま そうなんですよ。
  (続きます)

2008-02-01-FRI

(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN