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【社会】

残留孤児訴訟が終結 東京高裁で初、原告側取り下げ

2007年12月13日 夕刊

 中国残留日本人孤児の集団訴訟の控訴審で、原告40人が13日、東京高裁で開かれた第1回口頭弁論で訴えを取り下げた。新たな支援策を盛り込んだ改正中国残留邦人支援法の成立を受けての対応。国側も「首相の発言に基づき、誠実に実行していく」と同意。寺田逸郎裁判長が訴訟終結を宣言した。東京のほか、名古屋や長野など全国15地裁で争われた孤児の集団訴訟で、訴訟が終結するのは初めて。今後、訴え取り下げか和解によって訴訟は順次終結する予定。

 首都圏に住む40人の原告は、速やかな帰国措置や自立支援を怠ったとして、国に1人当たり3300万円の損害賠償を求め、2002年12月に東京地裁に提訴。孤児の約9割にあたる約2200人が参加する集団訴訟の皮切りとなった。

 今年1月の東京地裁判決は「孤児の損害は戦争被害であり、国に早期帰国や自立支援の義務はない。違法、不当行為もない」として訴えを全面的に退けていた。

 この日の弁論では原告2人が意見陳述。池田澄江さん(63)は「中国では侵略国の日本人として戦争責任を負わされ、帰国後は中国人とののしられ、何度も自殺を考えた。祖国に帰っても日本語ができず中国人と呼ばれる。孤児には仕事もなく7割が生活保護を受けている」と訴え、「孤児が帰ってきてよかったと思えるようにしていきたい」と述べた。

 鈴木経夫弁護団長は「事実認定の誤りや曲解に満ちた東京地裁判決を放置するのは、断腸の思い。孤児の発生原因をつくり、帰国を遅らせ、帰国後も無策だった国の責任をあいまいにしたまま訴訟を終結するのは残念だ」と意見陳述した。

◆東海訴訟は来年2月

 名古屋高裁に控訴し、同様に争っている東海訴訟の弁護団も13日、和解や訴えの取り下げにより、来年2月上旬までには訴訟の終結を図る方針を明らかにした。

 東海訴訟は東海、北陸など7県の計約210人が提訴。3次提訴までの約170人については3月29日に敗訴判決が出ており控訴した。控訴審の第1回口頭弁論の期日が来年1月下旬か2月上旬になる見通しのため、口頭弁論が開かれ次第、和解か訴えの取り下げをするという。

 名古屋地裁で審理中の4次訴訟は今月27日に進行協議することになっており、こちらも来年1月中に訴えを取り下げて訴訟を終結する方針。

 弁護団は「高いレベルの孤児への支援策を国から引き出すことができたため、訴訟終結で国への責任追及は終わりになる。今後は、国が支援策を柔軟に運用するかどうかなどについて、見守っていきたい」と述べた。

 

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