自動車工学のページ #05

− ブレーキ −




ブレーキのはたらき

なんとシンプルなタイトルでしょう(笑)
当たり前といえば当たり前です。ブレーキは車を止める(または、減速する)ための装置です。
では、どうやって減速するのでしょう。

総じて、動くものは運動エネルギーというものをもっています
この運動エネルギーを、摩擦によって熱エネルギーに変換するものがブレーキなのです。
つまり、「ブレーキが熱を生み出して運動エネルギーを奪っている」と考えてもいいのです
ブレーキ機構に熱がこもりすぎると、フェード現象を引き起こし、また、ブレーキの熱がブレーキライン内のオイルに伝わり、ペーパーロック現象を起こす可能性があります。



フェードとペーパーロック

フェード
ブレーキ機構そのものに熱がたまりすぎ、それ以上放熱できなくなったとき、制動力が低下することです。
ペーパーロック
ブレーキオイルが高温にさらされて沸騰したとき、内部に発生した気泡が圧縮され、ペダルを踏んでもブレーキが利かなくなることです。

どちらも通常では発生しませんが、長い下り坂などでブレーキを頻繁に使用すると起きうるので注意が必要です。
対策としては、一段低いギアに入れてエンジンブレーキを利かせることがもっとも効果的です。
ちなみに、ペーパーロックが起きたときは、ペダルを踏んだ感覚がフワフワとするそうです。
しかし、そうなったときにどうするのがよいかまではわかりません。

急な下り坂などで、どうでもブレーキが利かなくなったときは、エンジンブレーキを利かせて十分減速してから、山側の傾斜に乗り上げる格好で止めるか、所々に設けてある非常停止エリア(? 砂が数メートル敷き詰めてあります)につっこんで止めるしかありません。
いずれの方法でも、車の損傷は避けられません。このようなトラブルが起きないように、最初から注意しましょう。


では、以下にブレーキの紹介をしましょう。



ディスクブレーキ

回転するブレーキディスクを両側からブレーキパッドで挟む構造になっています。
ブレーキパッドを押しているものをブレーキキャリパーといいます。
通常の乗用車は、片側1ピストン(方式のキャリパー)ですが、ハイパワーのスペシャリティカーなどは、対向2ピストン方式や、対向4ピストン、さらにピストン径を変えてあるものまであります。
ディスクブレーキのメリット
 ・ディスクが露出しているので外気にさらされ、冷却効果が高い。
  つまり、熱エネルギーを次々と放出できるため、ブレーキ効果を維持しやすい。
 ・ブレーキの微調整をしやすい。(ペダル操作のこと)
 ・格好がいい。


ドラムブレーキ

密閉されたブレーキドラムの内側にブレーキシューを押しつける構造になっています。
ブレーキシューは、ディスクブレーキのブレーキパッドに相当します。
ドラムブレーキのメリット
 ・構造上、パーキングブレーキを組み込みやすい。
 ・ディスクブレーキに比べ、制動力は強い。



単純にディスクブレーキとドラムブレーキを比較することはできませんが、
総合的な能力を比較すると、ディスクブレーキの方が優れている点が多いです。
熱を放出しなければならないことを考えると、密閉されているドラムブレーキは構造から考えて不利です。
ディスクブレーキはペダルを踏んだだけ利くような構造ですが、ドラムブレーキはカックンブレーキと呼ばれる急激な利きがあるので、操作性の面でも不利です。

現在、乗用車では、前ブレーキはディスクブレーキ、後ブレーキはドラムブレーキを主に採用しています。
スポーツタイプや多人数乗車の車では、4輪ディスクブレーキを採用してあることもあります。
前ブレーキは更なる放熱性を考えてベンチレーティッドディスクブレーキ(後述)を採用してあることが多いです。



ブレーキに採用されている技術

ベンチレーティッドディスク
ベンチレーティッドディスク ベンチレーティッドとは、換気されるという意味です。
空気が通過できるように縦穴を設けた2枚のブレーキディスクで、ひとつのブレーキディスクが構成されています。
通常のディスクブレーキよりも放熱性がよく、乗用車の前ブレーキによく使用されています。
また、多人数乗車が想定されるRV車や、スポーツカーなどは、後ブレーキにも採用されています。
ごく最近のRV車では、後ろブレーキにドラムブレーキを採用するものも増えてきました。
これは、径を大きくして放熱性の問題をクリアできたことや、コストの問題もあるようです。


ABS(アンチロックブレーキシステム)こちらもご覧になってください。
ブレーキがいくら強力にできていても、車が安定して止まることができなければ、結果的に安全とは言えません。
例えば、雪道や雨で濡れた路面など、滑りやすい状況で思いきりブレーキを踏んだらどうなるでしょう?
答えは、車輪がロックして車の挙動は不安定になり制御が効かず、最悪スピンしてしまいます。
また、車輪がロックしている間はハンドルを切っても車が向きを変えることはありません。
ということは、目の前に何か飛び出してもかわすことはできないのです。
これを防ぐためには、車輪がロックする寸前にブレーキをゆるめ、そしてまたすぐにブレーキを効かせるのです。
プロのレースドライバーでもない限り、こんな芸当は不可能ですが、これを電子的にやってのけてしまおうというのがABSです。
ABSはその作動中、足の裏にブレーキペダルから「ココココココ」という感触が伝わってきます。冬なんかに、ちょっとブレーキを踏んだだけなのにこの感触があったら、スピードの出し過ぎと認識しましょう。
ちなみに、ABSは思いきりブレーキを踏まないと作動しません。
ロックしそうになるブレーキの制御をするのだから、当然といえば当然ですが、
運転に不慣れな人や、特に女性に、ブレーキを思いきり踏めない人が多いそうです。
これを解決するために、新たな装置が登場することとなりました。ブレーキアシストです。

ブレーキアシスト
前述の通り、ABSを作動させるために必要な踏力を発生させる装置です。
大筋としては、短時間に(各社で定めた)一定以上の踏力が加わったとき、
油圧をコントロールして踏力を増すように作られています。




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