自動車工学のページ #06

− 最近の車の装備 −




エアバッグ

エアバッグ! エアバッグという名称の認知度は、ほぼ100%に近いのではないでしょうか。
念のために、エアバッグ。エアバックではないですよ。

エアバッグ写真

で、この名称に対する認知度は抜群に高いエアバッグですが、どんなときに作動するか知っていますか?
これを知らないと、「衝突したのに開かなかった。」「いきなりエアバッグが開いてケガをした。」なんてこともありますし、また、エアバッグというのは正しい運転姿勢をとっていてこそ真価を発揮するもの。妙ちくりんな格好で運転していると、思わぬケガをしますので、ご用心。

エアバッグは、車のフロントに衝撃感知センサーがセットしてあり、一定以上の衝撃が加わると、ハンドルやインパネ内部にセットされたエアバッグのインフレーターが急激に膨張し、エアバッグが開くようになっています。

この時発生するのは窒素ガスですので、人体には無害です。(反応前の窒素化合物は、産業廃棄物として厄介な問題を抱えているようです。今後の技術の進歩に期待したいです。)

エアバッグの膨張は非常に高速高圧です。ハンドルによっかかったり、アクセサリーをエアバッグのカバーに取り付けたりするのは危険ですのでやめましょう。
また、バックミラーにワイドミラーをかぶせていることもあると思いますが、これもあまり大きいものは助手席側のエアバッグにはじき飛ばされてくることがあります。
同様に、ナビゲーションのモニターをインパネ上部に固定している車をよく見かけます。これも、取付け位置によってはドライバーが痛烈な一撃を受ける原因になるので、おすすめできません。ナビゲーションはインパネ格納型にしましょう。
もともと、インパネには何も置かないようにしてください、と注意書きがあったはずです。
これを無視して、あとでケガをして「どうしてくれるんだ。」なんて恥ずかしいことはしないようにしましょう。


エアバッグは、正式にはSRSエアバッグと標記します。SRSとはSupplemental Restraint System、つまり補助拘束装置です。
エアバッグの効果を引き出すにはシートベルトをしていなくてはならないのです。
たまに、「この車にはエアバッグが付いているから、シートベルトなんかしなくても大丈夫だよ。」なんて言う方を見かけますが、くれぐれも事故をしてから「エアバッグは全然効果がなかった。」なんて触れまわらないでくださいね。
シートベルトを着用せずにエアバッグが作動すると、下手をすると膨らんだエアバッグの上や横をすり抜けて、フロントガラスに突っ込んだり、Aピラーに激突する可能性があります。また、必要以上にエアバッグに接近するため、高速で膨張したエアバッグでしたたかに顔を打ちつけることは間違いありません。



サイドエアバッグ

自動車の安全性を追求した結果、サイドエアバッグというものが最近登場しました。
側面から衝突されて死亡した、という事故が多いという現実を受けてと思われます。
また、つい最近では頭部まで保護する大型タイプのものや、窓一面に広がるタイプもあります。
これは、側面衝突の中で、死亡の直接原因の約6割が頭部を強打したためという調査結果によるもののようです。
正しい認識は、フロントエアバッグよりさらに低いですが、車の安全性、というものを考えたとき、より早く標準装備化が求められると思います。
サイドエアバッグ写真



ABS

正しい名称は、アンチロックブレーキシステム。ロックしない(させない)ブレーキシステムです。
また、この装置は4輪すべてに取り付けてあることから、4W−ABSとも言います。(4Wheel-ABS)
エアバッグと並んで、名称に対する認知度は高いはずです。
ABSについての詳細は、#05の中のブレーキに採用されている技術にありますので、そちらをご覧ください。

ABSのポイントは、とにかくブレーキペダルを思いきり踏み込むことにあります。「危ない!」と思ったらすかさず「床よ抜けろ!」と言わんばかりに踏み込みましょう。そして、ハンドル操作で危険回避することも忘れないようにしましょう。
ABS効果図
最近では、ブレーキアシストなる便利な装置も登場しました。ABSと並んで解説してありますのでご覧になってください。(ブレーキに採用されている技術)


安全ボディ

どんなにABSが優れて危険を回避できてもも、エアバッグが付いて衝撃を吸収しても、そもそも基本的なボディがしっかりしていなくてはまったく意味がありません。
ボディにはふたつの使命があります。
ひとつは、乗員を限りなく安全に守ること。
ひとつは、限りなく車を安全に走行させること。

なんと単純なことでしょう。
しかし、こんな単純なことが本当に見直され始めたのは、一部のメーカーを除いてつい2〜3年前のことなのです。

ボディ剛性を高めたものに名称を与え、いち早く安全を謳ったのは、トヨタのGOA(ゴア)です。
それに追随して、日産ではゾーンボディ、三菱ではRISE(ライズ)、マツダではMAGMA(マグマ)ボディなどが登場しました。
各社さまざまなテストやシミュレーションのもと、日夜安全向上にしのぎを削っています。
その結果、どこのメーカのボディが特に優れている、というのは簡単には言えない状況です。

ボディを鍛えるというのは、ただボディを固くすることを言うのではありません。
人の乗るキャビンの剛性はできる限り強化し、それ以外はなるべくつぶれやすくするのです。
どうして?と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかしここで思い出してください。守るのは乗員であって、車の部品やエンジンではないのです。
クラッシャブルゾーンという、キャビン以外の空間で、衝突のエネルギーをなるべく吸収・分散し、キャビンに届く衝撃をやわらげているのです。そして、それでもなお乗員に届く衝撃エネルギーを、シートベルトやエアバッグなどで吸収するのです。
安全な車とは、より効果的に・安全に壊れていくボディあってこそのものなのです。
あなたの生命のために、あなたの愛車は常に体を張って守ってくれているのですよ。

(余談ですが、ボディ剛性の高い車は、2次的効果として走行性能が向上します。)


EBD

「EBD? なにそれ?」という方はずいぶんと多いのではないでしょうか。
車に詳しい人や、比較的最近登場したミニバンオーナーの方などはご存じでしょう。
EBDとは、電子制御制動力配分装置(Electric Break force Distribution)です。

多人数乗車する機会の多いミニバンでは顕著に現れますが、ブレーキをかけると、荷重が前寄りになってしまうため、リアのブレーキ力が発揮しきれない状態になります。
その結果、多人数で乗っているときの停止距離は、1人で乗っているときよりも多くなってしまったということがあります。

EBD装着車では、こうした状態のときにリアのブレーキ力を増加させ、多人数乗車時でも1名乗車時とほとんど変わらない制動距離を実現しています。
EBD効果図
今のところ、EBDを積極的に採用しているのはミニバンに多いですが、これは前述したとおり多人数乗車したときや大量積載したときの重量変化が大きいことによるものだと思われます。

最近では、コンパクトカーでもEBDを採用することが多くなってきています。
安全上、とても好ましいと思います。



TCS,TRC

TCSとはトラクションコントロールシステムの略です。
このシステムは燃料供給装置とABSに働きかけ、車の挙動を安定させます。
トラクションコントロールシステム効果図
例えば、滑りやすい路面、冬場なら、凍結した路面で、いつもの乾燥路面のようにぐっとアクセルを踏み込みますか?
(恒例ですが、試さないでくださいね。他人の迷惑になりますから。)
しないですよね。やはり、こういう路面状況下ではアクセルはそっと、そろーっと踏み込むはずです。なぜなら、タイヤが空転してスピンしてしまうかもしれないからです。
しかし、それでも不安は残ります。なにもタイヤが空転するのは発進時とは限らないからです。
ちょっと加速をしようとしたときでも、タイヤが空転して不安定になるという可能性は、滑りやすい路面を走行しているときには結構高い確率であるのです。
こんなときに威力を発揮するのがTCSです。

TCSの基本動作は、タイヤが空転したことをセンサーが感知すると、空転したタイヤのブレーキを効かせ、トラクション(駆動力)を抑制します。空転がひどいときには、エンジンの燃料をカットしてさらに駆動力を落とします。

ある年の冬、TCS装着車に乗る機会があったので、圧雪路で試してみました。
その日は、結構雪がひどく、いつもより遅い通勤ラッシュが終わったあとは車が全くいませんでした。
今思えば大した度胸だとは思いますが、通常路面と同じ踏み込みをしてみました。
すると、なんとなく力なく(?)車が動き出し、する〜っと滑り出すように発進することができました。

ちなみに、私の車はFFの2WDです。1速で発進しようとすると、よほど慎重にアクセルを踏まないと簡単にスリップするので、2速発進を多用します。(それでもスリップすることがあります。)
この時に乗ったTCS付きの車もFFの2WDで、TCS以外は私の車とほぼ同じ条件です。
大きなトラクションをかければ確実に空転するところですが、発進時、明らかに安定していることが体感できました。

この手応えだと、コーナーを抜けるときでも安定して加速できるだろうなとも思いましたが、さすがに試す勇気はありませんでした。



DSC


各メーカーでAYC,VSC等、さまざまま呼称がありますが、「横滑り防止装置」のことです。
トラクションコントロールが加速時、ABSが減速時のサポートをしてくれるのに対し、この装置はズバリ!旋回時のサポートをしてくれるものです。

オーバースピードでコーナーに侵入すると、FF車の場合アンダーステア(フロントが外へふくらむ)の傾向が出ます。また、FR車の場合は逆にオーバーステア(リアが外へ流れる)の傾向が出ます。
これらの現象を抑えるのがDSCなどと呼ばれる装置なのです。

アンダー・オーバーステアそれぞれのときの動作状況は省きますが、DSCという装置は、TCS及びABSを総合的に制御しています。つまり、TCSとABSを同時に制御しながら横滑りを抑制しているのです。

いいことづくめのDSCですが、なんにせよ、車というものは1トン近くもある重量物です。いくら最新の装備で固められているからといっても、それを過信すると、大きな事故につながります。くれぐれも、無謀な運転はしないでくださいね。



クラッチスタートシステム

教習所で習うところのマニュアルミッション車は、ブレーキを踏み、クラッチを切り、セレクトレバーをニュートラルの位置にして、そして初めてイグニッションキーをひねるように、ということです。

ところが、オートマチック車と比べてフェールセーフ(まちがいを起こさせない)機構が甘いため、例えば、開けた状態の窓の外から手を伸ばしエンジンをかけたとき、セレクトレバーが万が一いずれかのゲートに入っていると、車は急発進してしまいます。
たいていの場合、一瞬動いてすぐにエンストするはずですが、トルクの強いエンジンや、クラッチが磨耗している場合、そのまま走り続けてしまうことになります。なんと運転席に人がいないまま走ってしまうのです!
それを防ぐために開発されたのがクラッチスタートシステムです。つまり、クラッチペダルを踏んだ状態でないと、イグニッションキーをひねってもエンジンが始動しないようになっているのです。
従来のマニュアル車から新しく最新のマニュアル車に買い換えられた方は、「故障かな?」と思う前に、本来の始動方法を思い出してみてください。

余談ですが、教習所ではこうもありました。
「踏切などでエンストし、動けなくなったときの緊急策として、セレクトレバーを1速に入れ、クラッチを繋ぎ、イグニッションキーをひねってください。そして車を少しずつ動かし、踏切内から脱出してください。ただしこの方法はオートマチック車ではできません。」と。
この1文に付け足す必要がありそうですね。マニュアル車でもできません、とね。
ていうか、そもそもこの1文を消さないといけないですね。

このクラッチスタートシステム、全国で数%しかいないマニュアルミッション車オーナーの、半数以上の戸惑いを呼ぶことは間違いないでしょう?


マニュアルモード付オートマチック

マニュアルモード付AT なんだかよくわからないタイトルですね。若い世代ならご存じの方も多いでしょう。一般に、スポーツモードATと呼ばれるものです。

オートマチックは、通常D(ドライブ)レンジに入れると、あとの変速は車におまかせ〜、ですよね。
ところが、このオートマチックのシフトパターンは、いわゆる“万人”向け、しかも、エンジントルクをなるべく有効に取り出せる回転域に調整されているため、スポーティーな走行、特に、1つのギアを維持することが難しいです。
マニュアルモード付オートマチック車は、ドライバーの任意でギアチェンジができるようにしてあり、これらの操作を可能にしています。
通常は、普通のオートマチックと同じですが、マニュアルモード(たいてい、Dレンジの横へシフトレバーをスライドさせるようになっています。)にすると、任意のタイミングでシフトチェンジができるようになります。
マニュアルモードが真価を発揮するのは、スポーツ走行時だと思います。通称、スポーツモードATと言われるゆえんでしょう。また、一般ドライバーの方でも、長い下り坂を降りるときのエンジンブレーキや、雪道などでの2速発進など、マニュアル車ででき、オートマチック車でできなかったことも可能になります。クラッチの操作が不要な分、より運転しやすいとも言えます。
余計なコラム「マニュアルミッション」
マニュアルミッション車では、クラッチを自分で操作しなければならない反面、
自分で車をコントロールできるので、ドライバーの腕によってはオートマチックよりも
はるかに乗り心地を良くすることができます。

今ではずいぶん改善されていますが、オートマチック車では、どうしてもシフトアップ時に
微妙なショックが発生します。(アクセルワークである程度おさえることができます。)
マニュアルミッション車なら、腕ひとつで高級車と同等の乗り心地にできます。

ついでに、シフトダウン、特に、徐々にスピードを落として停止しようとしたとき、
オートマチック車はどうしてもショックが発生します。
これは、トルクコンバーターが常時動力をトランスミッションに伝えているための弊害です。
こんなとき、マニュアルミッション車はクラッチを切ってしまえばいいのです。

また、エンジンブレーキは、オートマチック車よりも強力に効かせることができるため、
下り坂におけるブレーキへの負担が軽くなります。

(自分がマニュアル派のために、なんか力入っちゃったな。)




ナビゲーション

ナビゲーション写真 最近、急速に普及している装置のひとつです。
安全装置と違い、ユーザーが選択できる装置としては、かなりの普及率を誇っています。
90年代中期頃の製品と比較すると、操作性は格段によくなり、格納されているデータも大量になっています。
最近では、データの記憶にDVD−ROMを使用するなど、より一層大量の情報が利用できるようになっています。


現在、「次に車を買えるとして、そのときに欲しい装備は?」で、もっとも人気の高い装備の一つです。
ナビゲーションシステムは、クルマの購入時に、製造ラインで装着するもの、ディーラー(販売店)やカー用品店で後付けするものなど、製品の選択の幅が広がっています。

それぞれに一長一短あります。

製造ラインで装着するものは、クルマの設計にあわせて作られているため、デザインがマッチしている。ナビゲーションとオーディオ機能が連動する、等のメリットがあります。

後付の場合、製品の選択の幅が多彩なことがメリットになります。
製造ライン装着のものに比べ、最新の機能、最新のデータを盛り込んであること、車を買い換えても付け替えのできる可能性が高いことなどがあります。

また、最近ではナビを行わないとき、内蔵のDVDプレーヤーで映画を見るなど、単なるナビゲーションシステムではなく、エンターテインメント性を備えた製品が増えてきています。

記録メディアも、DVDをさらに進化させ、ハードディスクに地図情報を記録し、携帯電話で最新の地図情報をダウンロードする、といった進化を遂げつつあります。

まだまだ進化しそうなナビゲーションです。この先が楽しみです。


余計なコラム「ナビはライン装着?/後付? どっち?」
一般的に、ナビの性能としては、後付のほうが高機能で、しかも低価格といわれます。
製造ライン装着の場合、各メーカー独自で展開している
ネットワークサービス(トヨタならモネ、マツダならマツダテレマティックス、等)を受けられる。
どちらにも譲りがたいメリットがあります。

おクルマを購入する際には、担当についた営業の方とよく相談されると良いでしょう。


余計なコラム「ナビゲーション画面の注視禁止」
平成11年11月より、ナビゲーションの注視の禁止条項が盛り込まれました。
ナビを見るだけなら問題ないですが、それがもとで事故を起こしたときには、
普段よりも重い罰が科せられます。
ナビの操作は、安全な場所に止まって行いましょう。




リア席TVシステム


ミニバンというクルマのジャンルが確立されて、クルマはもはや単なる移動手段ではなくなりつつあります。
クルマの中でリラックスしたり、オートキャンプ場で寝泊まりしたりと、クルマの中で過ごすこともあるでしょう。

そんな中、リア席の快適性を求める声に応じて登場したものが、リア席TVシステムです。
カー用品店等では、リア席用のTVを独自に開発していたりしていますが、最近では、製造ライン=クルマを組み立てる段階で装着するものが増えてきています。
たとえばマツダでは、「リアシートエンターテインメントシステム」という名称で販売しています。

クルマを開発したところが作るだけに、TV画面を使わないときにはすっきり収納できる等のメリットがあります。


今はまだ出始めなので、まだまだ価格が高いイメージがありますが、これも徐々に安くなり、認知されていくでしょう。




ホームページへ