◎ネット公売普及 自治体増やし市場広げたい
悪質な税滞納者の財産を差し押さえて競売するインターネット公売に石川県が初めて参
加した。出品した物件の半数以上が売れ残り、見積価格の設定などに課題を残す結果となったが、ネット公売は売却額の多寡以上に、自治体がそこに参加することによって差し押さえも辞さない強い姿勢を示すことに大きな意味がある。
ネット公売のシステム自体はすでに定着したと言え、動産を差し押さえようと思っても
売却先がなかなか見つからないという自治体側の言い訳も通用しにくくなってきた。県内では金沢市、加賀市、内灘町がすでにネット公売に参加し、富山県でも県、富山市、高岡市に続き、射水市、砺波市が準備を進めているが、まだ少数派である。参加自治体が多くなることで人々の関心が高まり、入札参加者も増えるだろう。オークション市場が拡大し、物件の売却率が高まる好循環をつくっていきたい。
ネット公売は民間のオークションシステムを通して全国の自治体が参加して定期的に行
われている。県は昨年から参加準備を進めていたが、公売物件が得られたことから一月に初めて出品した。九谷焼やテレビ、機械類など三十五点のうち十四点が売却され、落札総額は見積総額の一・六倍となる二十二万八千七百円となった。県は見積価格を見直したうえで再度、出品する方針である。
ネット公売で動産の売却がしやすくなったとして、県は今年度から県税滞納者の自動車
を走行不能にするタイヤロック装置も導入した。北陸は自動車の依存度が大都市以上に高く、車を差し押さえることは生活に不便さを強いることになる。見逃せないのは、装置を取り付ける直前や通告した段階で税金を納めるケースが相次いでいることだ。支払い能力があっても納付に応じない人が少なくないことの表れとも言える。
税金だけでなく、保育料や給食費、水道料金などの納付を怠る人も増えている。支払っ
ている人との公平性を保つうえでも、収入や財産があっても納付意思を示さない滞納者については差し押さえも選択肢に入れた毅然とした姿勢が徴収側に必要である。他の市町も、先行する自治体からノウハウを学ぶなどしてネット公売やタイヤロック装置を積極的に活用してほしい。
◎北にウラン技術なし 「ゲームやめよう」の警告
六カ国協議の米首席代表クリストファー・ヒル国務次官補がアマースト大で行った講演
で、注目すべき発言をした。慎重な言い回しだが、北朝鮮の核開発について「ウラン濃縮能力を取得できていない」との米国の認識を明らかにしたのだ。
ヒル次官補は、北朝鮮が持っているプルトニウムについても三十―四十キロだろうとの
感触を持っているとの見解を語った。手の内が分かっているのだといわんばかりの発言を通して、米国の北朝鮮に対する武力介入があり得ないことがさらに明確になった。発言の真偽はさておき、「技術を取得できていない」とするヒル発言は手の内が分かっているのだから、もう核ゲームはやめようという警告のようだった。
北朝鮮がウランを濃縮して核爆弾をつくる能力をすでに持っているのか、それともまだ
持っていないのかがはっきりしていなかった。プルトニウム爆弾の製造には成功したとみられる状況証拠はあるのだが、ウラン爆弾については不透明だった。
北朝鮮が、パキスタンのいわゆるカーン博士の核技術売りさばきネットを通してウラン
濃縮技術を手に入れようとしていたことは推察されていたのだが、成功したのかどうかがはっきりせず、それが関係国に疑心暗鬼を生じさせ、恐れさせていたのだった。
ヒル次官補の発言で、そうした疑惑が北朝鮮の核ゲームの手の内にすぎないようにみえ
てくるのだ。大量破壊兵器がないのに、あるのかないのかをはっきりさせなかったため、米国の武力行使を招き、ついえたイラクのフセイン大統領が、核を含む大量破壊兵器に成功したような疑惑を持たせるためにあいまいな態度を取り続けて周辺国をけん制したのを思い出させるのである。
北朝鮮は昨年十月の六カ国協議の合意文書の完全で速やかな実行を土壇場で渋っている
。たとえば、その有力な証拠として寧辺で行われている核施設無能力化のための燃料棒抜き取り作業のペースを落としているといわれる。北朝鮮がヒル次官補の発言に対してどう出るかが注目される。が、北朝鮮の選択肢が少なくなってきたことが次第にはっきりしてきたのではないか。