鎌倉から南北朝時代の随筆家吉田兼好が残した「徒然草」。学生時代に教室で読んだのが最初だが、その後も折に触れて目を通している。
四季の美しい日本。その移り変わる様子は「何かにつけてしみじみとした情緒を感じる」(第十九段)ものだが、では、春と秋のどちらが勝るか。兼好法師は「情趣があり、しかも心浮き立つものは春の風物だ」とする。
鳥の声、のどかな陽光、かすみ、今にも開こうとする桜の花。そんな時、雨や風の日が続いて慌ただしく散り過ぎてしまう。また、梅の花の香り、山吹の清らかさなど見落とせないものばかりだ、と。
きょうは二十四節気の一つ、立春だ。日本列島に寒気が入り込み、名ばかりの春となったが、これからは兼好法師が楽しみ、現代にも引き継がれている春への思いが確実にふくらんでいくだろう。冷え冷えとした「ねじれ国会」にも少し暖風が吹き込んだらと思う。
ガソリンにかかる揮発油税などの暫定税率の延長か、廃止かなどをめぐって与野党協議が行き詰まり先週、衆参両院議長が「年度内に一定の結論を」とあっせん、何とか混乱を回避した。今週、道路整備計画、財源の妥当性について骨太の話し合いをするよう求めたい。
国民が望んでいるのは政局絡みの駆け引きではなく、時に政府案を修正する花も実もある議論で、これぞ「心浮き立つ」だ。