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理系新卒欲しい!! 団塊の技継承へ争奪過熱

大手:リクルーターを倍増、中小:囲い込み地域ぐるみ

 2009年春に卒業する学生の就職活動が本番を迎え、理系の人材争奪が熱を帯びている。売り手市場の就職戦線を反映し、技術力をアピールしようと、リクルーターを大幅に増やす大手メーカーが目立つ。一方、大手企業の採用増のあおりを受ける中小企業を支えようと、親を巻き込み、地域ぐるみで人材を囲い込む動きもある。

(戸田博子)

メーカー人気復活

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理系の人材獲得が激しくなっている(京セラドーム大阪で2007年12月に行われた企業の合同説明会)=宇那木健一撮影

 企業が理系の人材を求めているのは、団塊世代の定年退職に伴う技術の継承などが背景にある。

 ダイキン工業は「頭数でなく、優秀な人材が欲しい」(十河政則・取締役専務執行役員)と、リクルーターを前年の2倍の200人に増やした。さらに広告会社と組み、半年かけてテレビCMなどを使うイメージ戦略を練る。

 オムロンは3月末、理系学生向けに「ものづくり生産セミナー」を初めて開く予定だ。工場を見学してもらい、「技術力の高さを見せつける」(同社)。リクルーターも100人増の220人にする。

 シャープは2月中旬、初めて社外で就職セミナーを開く。大阪市内のホールを2日間借り切って複数のブースを設け、理系向けには技術がわかりやすいように事業分野ごとに仕事内容を紹介する。

 学生の反応はどうか。就職情報出版のダイヤモンド・ビッグアンドリードが07年に調べたランキングで、理系男子はシャープが10位から4位に上昇。理系女子でもソニーなどが人気を集め、「非メーカー人気」が変わりつつある。

親にもアピール

 大手に優秀な人材を奪われかねないと、中小企業は危機感を強める。東大阪商工会議所(大阪府東大阪市)は、毎年5〜6月ごろに合同企業説明会を開くが、参加学生が02年の420人をピークに減少。07年は会場の都合で開催日が半分の1日だったこともあり、115人に。

 こうした厳しい状況を踏まえ、東大阪市の大阪府立布施工科高校は、生徒の母親が地元中小企業で仕事を体験する「おかんデュアル」を行った。

 高卒理系も、売り手市場が続き、同校は08年春に就職する約140人に対し、700社を超える求人があった。ただ、親は子供に大手企業への就職を勧めがちだ。そこで「高い技術力がある地元企業を人材面で支える必要がある」(安村博文校長)との考えから06年に実施した。07年秋も母親らが中小企業を見学した。

どう育てるか

 少子化や理科離れで、ものづくりにかかわる人材をどう育てるかは、教育、経済界を含めた課題だ。

 経済産業省と文部科学省が協力して、地元メーカーの経営者が高校生らに仕事の面白さを語るなどの取り組みを始めた。しかし「子供のころからのキャリア教育が必要で、中小企業の技術伝承の断絶を防ぐには遅すぎた」(大阪府)との声もある。白川功・兵庫県立大教授(大阪大名誉教授)は「教育現場の意識改革はもちろんだが、企業は技術者を能力別に処遇するなど、努力が報われる仕組みを整えることが理系人材の増加につながる」と指摘している。

2008年2月4日  読売新聞)

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