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発信箱:イメージの祭典=町田幸彦(欧州総局)

 オリンピックは国威発揚の祭典である。北京五輪は経済大国にのし上がった中国の晴れ舞台だ。8月開催を前に、中国当局が顔をしかめるニュースが先月下旬、英国で流れた。

 英王室のチャールズ皇太子が北京五輪開会式に出席しない意向をチベット独立支援団体「フリー・チベット・キャンペーン」に明らかにした。英紙によると、中国側は皇太子に開会式招待を打診し、この団体が問い合わせた。

 皇太子の報道担当官は「大会招待はない。皇太子の五輪出席は1976年のモントリオール大会(妹アン王女が乗馬代表で出場)だけだ」と述べた。真相は不明だが、要するに北京五輪に皇太子は行かない。97年の香港返還式典に参加した中国高官を「ぞっとする古びたろう人形」と日記に記した皇太子は、亡命中のチベット仏教指導者ダライ・ラマ14世と親しい。だから、また中国に「ひじ鉄砲」と新聞が皮肉った。

 中国側は北京五輪のイメージが傷つく話なので気分が悪いだろう。これから本番に向け、この国の人権問題を欧米メディアは注視していく。

 五輪大会と開催国のイメージでは、88年ソウル五輪が強く印象に残っている。「米帝国主義の支配下であえぐ韓国」というソ連・東欧の見方がテレビの五輪中継や報道で一変した。ソウル五輪により韓国の発展を知った東側陣営の驚きは共産圏崩壊につながる心理的動揺の一つになった。

 さて、北京五輪のイメージはどうなるのか。大国の復活、それとも虚構の繁栄。中国の進出が著しいアジア、中南米、アフリカの人々の感想を大会後に聞いてみたい。

毎日新聞 2008年2月4日 0時29分

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