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【社会】

謎に拍車、質問打ち切り 会見わずか20分

2008年2月3日 09時55分

 中国製ギョーザ中毒問題で、記者に囲まれて質問に答える河北省輸出入検査検疫局の程方局長=2日、中国河北省石家荘市で(共同)

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 中国製ギョーザによる中毒で2日、中国当局が「工場でメタミドホスの使用はなかった」と発表、殺虫剤混入の謎はさらに深まった。ギョーザを製造した天洋食品側も初めて記者会見を開き「極めて驚いている」。依然として手掛かりすらつかめない現状に、被害者は「分かるまで調べて」と訴えた。真相究明は近く始まる日中共同での調査に委ねられる。

 【石家荘(中国河北省)=新貝憲弘】中国製ギョーザの中毒で、製造元の「天洋食品」責任者が2日に初めて開いた記者会見は、安全性を強調してわずか20分で終了。詰めかけた日本側報道陣の質問も途中で打ち切り、足早に立ち去った。中国の企業が不祥事に関して記者会見を開くのは極めて異例。調査への協力姿勢をアピールしたが、その内容は日本の消費者が納得するにはほど遠いものに終わった。

 石家荘市内のホテルで開かれた記者会見には、日本メディアを中心に80人近くが出席。天洋食品代表の底夢路工場長は司会役の部下とともに硬い表情で着席した。冒頭「今回の中毒を非常に驚いている。職員を代表して日本の消費者にお見舞い申し上げ、早期回復を心から願います」と軽く頭を下げたようにも見えた。緊張からか、用意されたお茶でのどをしめらせる場面もあった。

 底工場長の説明は用意した原稿を読み上げるだけで、視線を下に落としたまま。「この2年間で基準を超えた残留農薬は検出されていない」などと強調するばかり。中毒原因となったメタミドホスについて聞かれても「厳格な管理体制を敷いている」などと答えるだけ。報道陣が工場の公開を求めても「政府の調査がスムーズにいくよう協力するため、まだ招待できない」とかわした。

 過酷な労働条件に従業員から不満が出ているとの指摘には「企業には企業の管理がある」と主張。そのまま質問を打ち切った底工場長に報道陣が殺到したが、職員らが制止して立ち去った。

 会見には中国国営新華社通信や中央テレビなど中国メディアも参加したが「ギョーザの輸出量は」「日本市場の評判は」など中毒とは直接関係ない質問に終始した。

 天洋食品に先だって行われた河北省輸出入検査検疫局の会見も同様で、天洋食品をかばう発言が目立った。こちらも質問を途中で打ち切りわずか15分ほどで終わった。

 2日に会見が行われた天洋食品の底夢路工場長と程方・河北省輸出入検査検疫局長の主なやりとりは次の通り。

 ■底夢路工場長

 ――日本への輸出実績は。

 昨年は3970トン。横浜、神戸、東京に輸出している。

 ――会社がメタミドホスを使用したことは。

 私たちは厳格な管理体制、消毒制度、規約を有している。粗悪品を出したことは一度もない。

 ――使用していないという意味か。

 管理は厳格と言ったはずだ。ドア、通路、全生産工程で手洗い、消毒、着替えを徹底している。

 ――国慶節(10月初め)の連休中、品質管理に問題はなかったか。

 現在調査中なので、結論を出したくない。

 ――工場の待遇をめぐり、労使紛争が起きている。事件との関係は。

 企業には企業の管理方法がある。

 ■程方局長

 ――工場でメタミドホスが使われたことは。

 使っていれば、会社は登記できない。つまり、使っていないということだ。

 ――混入の原因は何か。

 私も関心を持っている。中日双方が共同で解明することを望む。

 ――メタミドホスは今も農村で使われている。

 中国政府は昨年1月から使用を明確に禁止している。

 ――天洋食品は昨年以前にはメタミドホスを使用していないか。

 輸出企業は中日双方の規定を厳格に順守する必要がある。そうでなければ合格できない。 (中国総局)

 ■『調査に疑問』『真実どこに』国内被害者ら

 「原因が分かるまで調べて」。中国製ギョーザによる中毒の被害者は「メタミドホスの使用はなく、工場に安全上の問題は見つからなかった」とする中国側の2日の発表に、そう訴えた。

 1月に妻、二男とともにギョーザを食べて中毒症状を起こした兵庫県高砂市の自営業の男性(51)は「どれだけ調べているのか。発表内容は疑問だ」。

 家族3人は10日間から3週間入院。「手足が震え、死ぬかと思った」という。二男は今もしびれが残る。男性は「原因が分かるまで調べてほしい。中国には誠意ある対応を求めたい」。日本政府にも「中国と協力して調べて」と要望した。

 昨年末に中毒症状で入院した千葉市稲毛区の女性(36)は「中国側(の発表)について自分が言うことはないが、真実は知りたいと思う」と自宅前で言葉少なに話した。 

(東京新聞)

 

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