【戯言戯画】橋下徹　大阪人のツボ押さえた

　もう先週の話になるけど、テレビで大阪府知事選の開票速報を見ていたら、街頭インタビューで橋下徹氏の当選について感想を求められた若い女性のひとりが、こう言い放った。

　「大阪人は有名人が好きだから」

　つい、苦笑い。イイ線ついてるなぁ。タレント弁護士の姿は、絶大な人気を誇った元知事、横山ノック氏とだぶってしまう。

　それだけとは言わない。言わないけれども、他の候補を圧倒した票数のどこかには「面白そうやん」というノリがひそんでいるはずだ。いまは東京暮らしだけど、僕も大阪人。選挙権があったら、うっかり１票投じていたかもしれない。

　彼女の卓見に、ひとつ私見を付け加えたくなる。大阪人はアホと言われたい人種なのだ。他の地方の人たちには理解できないかもしれないけど、経験上、少なくない数の大阪人は「アホか」とツッコまれることに快感を覚えている。人をおとしめる笑いより、自虐系ギャグを尊ぶ。

　それはきっと、関西のテレビ番組によく出演していた橋下氏も十分自覚していたはずだ。知的なイケメンだけど下品で露悪的。弁護士だけどアホ。愛さずにはいられないキャラクターを演じていた。

　ほんの一例を挙げれば、申告漏れを報じた弊紙に対するブログでの罵倒。「このオナニー新聞が！」。どう言えばウケるか、ほんとによく心得ていた。今後はそんな芸風も変えるんだろうか。

　議会では是々非々で「激論をしたい」という橋下氏。府の各委員会が「たかじんのそこまで言って委員会」みたいにならないことを祈る。なっても面白いけど。（篠原知存）