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【年金問題報告書7】「社保庁に3つの組織的欠陥」

2007.10.31 21:37
このニュースのトピックス年金問題

 III 年金記録問題発生の間接的な要因−組織上の問題

 ・直接要因を助長し、背景となった要因に、社保庁の組織上の問題がある。三層構造に伴う問題、職員団体の問題、地方事務官制度にかかわる問題など、組織としてのガバナンスが決定的に欠如していた。人事政策や人材育成上の取り組みは不十分で、地方組織は都道府県ごとの過度の独自性を主張し、全国統一的な業務処理の視点が欠けていた。

 (三層構造に伴う問題について)

 ・社保庁職員は(1)厚労省本省採用のI種職員(2)本庁採用のII種・III種職員(3)地方採用のII種・III種職員−という三層構造で、ガバナンスの不足した組織となった。

 (1)本省採用のI種職員は人事異動が頻繁で社保庁出向も2年前後。現場業務を十分に習熟することができず、日常的業務の管理を部下に任せ、事業運営の観点からの判断や指示を行わなかった。

 (2)本庁採用のII種・III種職員は、本庁内部部局や社会保険業務センターに勤務し、社会保険事務所等の現場実務を熟知せず、専門職員としての養成が十分でなかった。実績を評価せず年功序列で幹部に発令し、在任期間も1、2年と短期で、地方採用のII種・III種との組織上の一体感醸成や組織管理を十分に行わなかった。社会保険事務局長になりえる本庁採用者と、地方に勤務する地方採用者に、登用に大きな差があった。

 (3)地方採用のII種・III種職員が社会保険事務所長になる場合も、1年程度の順送り人事で、事業を実施・管理する人事になっていない。地方採用のII種・III種は長く地方事務官という変則的存在で、国家公務員でありながら都道府県に属していたため、組織の一体性に欠けていた。原則都道府県に限定した異動で、都道府県間の連携・一体性がなかった。

 ・三層構造という採用形態によるグループ分けは他組織にもあるが、社保庁の場合は、人事運用において本庁と地方の配置の考え方や幹部登用方針で、はっきりと別々の扱いをしてきた。また業務運営上でも大きな問題を抱えた。

 (1)三層構造は、情報や問題意識、ノウハウの共有の障害になった。現場職員は、本庁採用の上司に業務運営上の問題点を十分に知らせなかった。

 (2)本庁は現場に対して統一的業務マニュアルを近年まで示さず、地方の裁量に任せがちだった。

 (3)社会保険事務局は、社会保険事務所や市区町村への指導機関として十分機能しなかった。

 (4)現場でも記録を探すためのノウハウなどが職員個人限りで組織的に活用されなかった。

 (5)人材育成の研修もほとんど実施しなかった。

 (職員団体の問題について)

 社会保険庁勤務の職員団体には2つの系統がある。(1)全国社会保険職員労働組合(平成19年3月までは自治労国費評議会)は40都道府県に支部、組合員数は約1万500人(2)全厚生職員労働組合は11府県に支部、組合員数は約2300人。

 ・昭和40年代の業務機械化や50年代のオンライン化に自治労国費評議会は強く抵抗。当局と職員団体が、同じ方向を向いて業務改善に取り組まなかったのは大きなマイナスとなった。

 ・自治労国費評議会が地方事務官制度の廃止と地方公務員への身分移管を求めた「闘争」は、組織全体のまとまりを欠く原因となった。

 ・職員団体が自分たちの待遇改善を目指すことのみにかたより過ぎたため、年金記録を正確に保つという使命感や視点が希薄だった。当局と職員団体の間には多数の「覚書」「確認事項」が存在し、職員団体の姿勢を当局も容認していた。

 (地方事務官制度にかかわる問題について=略)

 (厚労省本省と社保庁の関係)

 ・本省は社保庁の業務全般にわたり管理監督する立場から、本来の機能が十分に発揮されているかという視点を持って、積極的に関与していくべきだった。年金記録問題については、このような観点からの注意や関心が希薄で、本省としての責務を果たしていたとは到底言えない。

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