適切な救急医療目指し、都が検討を開始

 患者の救急搬送中の事件が全国で相次ぎ、救急医療体制の整備が喫緊の課題となる中、東京都は「救急医療対策協議会」(会長=島崎修次・杏林大学医学部救急医学教室教授)を設置し、本格的な議論を開始した。救急医療機関が減少する一方、救急患者数は増加傾向にあるという現場の実態を踏まえながら、搬送時の病院選定の迅速化や救急患者の円滑な受け入れなどについて学識経験者や患者らを交えて話し合う。今年9月中に一定の結論を出し、2009年度の施策へ反映させる方針。

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 昨年8月、奈良県の妊婦が受け入れ先が決まらず救急搬送中に死産するなど、各地で救急医療体制のほころびが表面化している。
 都はこのような状況を重視し、迅速かつ適切な救急医療の確保について検討すべきと判断。同協議会を設置し、2月1日に初会合を開いた。

 都は初会合で、討議のたたき台となる資料を配布。それによると、都内で救急搬送された人数は、02年に588,502人だったのが、06年には626,543人となり、約6%増加している。その一方で、救急医療を提供する医療機関の数は、02年の374か所から、06年には342か所に減少。また、搬送時の病院選定に要する時間が02年から06年の間で3分ほど長くなっている。
 都はこれらのことを確認した上で、医療提供における問題点として、▽中等症・重症患者に対応する「二次救急医療機関」の中でも提供できる医療レベルに差があること▽夜間や休日は各診療科の医師が交代で対応していることが多いため、処置が困難な事例が発生すること▽重症・重篤患者の“最後の砦”とされる救命救急センターなどの「三次救急医療機関」に必ずしも重度でない患者を搬送せざるをえないこと―などを提示した。
 加えて、専門医療を求めたり、救急医療を時間外診療と見なして利用するなど、患者の意識の変化についても考慮する必要があると提案した。

 会合では委員がそれぞれの立場から個別に検討課題を提示。
 石原哲委員(白鬚橋病院院長)は「救急患者の受け入れの議論には、救急ベッドだけでなく、一般ベッドの空き状況の把握も不可欠」と話し、救急から入院まで広い視野から論じる必要性に言及した。
 このほか、野口英一委員(東京消防庁救急部長)は「都は人材などの面で医療資源に恵まれている。戦術的にこれをどのように活用していくかが大事」と提案。一方で、安藤高夫委員(東京都医師会理事)からは「医師不足や看護師不足が深刻で、診療報酬的にも厳しいのが現状」と、救急医療機関の体力低下を危ぶむ意見も上がった。
 島崎会長は医療提供体制を考える際のルールとして、「いつでもどこでもだれでも受けられる」「受けたい医療を高い質で受けられる」「ローコストで受けられる」という3つがあることを示した上で、「行政はこのうちの2つは選べるが、同時に3つをかなえることは不可能。ハイコストになることを理解してほしい」と述べ、都に財政的な支援を求めた。

 同協議会は小委員会を設置して議論を重ね、今年7月に中間報告を取りまとめる予定。最終報告については9月中に行い、09年度の施策に反映することを目指す。


更新:2008/02/04   キャリアブレイン

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