憲法を歩く 施行60年
第4部は「貧困と労働」の現場ルポ
【社会】君が代不起立 教職員名収集を継続 神奈川県教委、答申を無視2008年2月4日 夕刊 卒業式や入学式で国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を、神奈川県教育委員会が情報収集していることについて、県個人情報保護審議会が「不適当」と判断した問題で、県教委は四日、不起立者の氏名収集を今後も続ける方針を明らかにした。 この問題では、収集の中止を求める不起立教職員の異議申し立てを受け、県個人情報保護審査会が昨年十月、氏名収集は個人情報保護条例が取り扱いを禁止する「思想信条に関する個人情報」に当たると答申していた。県個人情報保護条例が規定した二つの諮問機関が、相次いで収集は不適当とする判断をしたのに、県教委は個人情報の収集を強行する異例の形となった。 この日の県教育委員会定例会で、中岡正広高校教育課長が「不起立の教職員を粘り強く指導していきたい。理由を今後も聞くつもりはない」と述べ、三月一日に集中する本年度の卒業式でも、氏名収集を続けるとした。 県個人情報保護審査会の答申を受け、県教委は県個人情報保護審議会に諮問。審議会も今年一月、氏名収集は不適当とする答申を出していた。 背景に政治的配慮も<解説> 神奈川県教育委員会が、あくまで不起立の教職員の氏名収集を続ける理由は、不起立者の氏名を思想信条に関する個人情報とは認めず、教職員への指導に必要な服務情報にすぎないという主張からだ。 県個人情報保護審査会は「起立しない理由の多くは、過去に日の丸・君が代が果たしてきた役割に対する否定的評価に基づく」として、不起立は教職員の思想信条の表れと指摘した。県教委の諮問を受けた県個人情報保護審議会の委員の多くも、氏名収集が憲法一九条が保障する「思想良心の自由」に反するとした。 しかし、県教委は二つの諮問機関の指摘に対抗する明確な理由を説明していない。審議会の答申で「最終的な職権行使は、教育委員会に条例上委ねられている」と明記された部分だけをとらえ、「答申に反してはいない」と強弁している。 同県の松沢成文知事や県議会最大会派の自民党県議らは、不起立者に対し、懲戒処分を含めた強い態度で臨むことを県教委に求めている。県や県教委が氏名収集にこだわる背景には、政治的な配慮も垣間見える。 県立学校の教職員約一万人のうち、昨年四月の入学式で起立しなかったのは二十五人。政治的圧力から少数者の価値観を抑圧するようなことは、多様な子どもたちが学ぶ教育現場であってはならない。(横浜支局・西尾玄司、<1>面参照) 黒崎勲・日本大教授(教育行政学)の話 各種の専門家が集まって結論を出した審議会の答申に大きな問題点があるとは思えず、答申に反するのは異常だ。なぜ、「日の丸・君が代」の指導のやり方だけ、県教委が細かくルールを決めるのか。教職員が起立しないことで、式が混乱するなどの実害が出ていないのに、なぜ、氏名を集める必要があるのか。県教委には、多くの県民が納得できるだけの説明が求められる。
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