《奈良県在住の私どもには救急医療では、産科以外にも特に小児科問題が深刻です》
先週の風で紹介した大和郡山市の母親からの訴えだ。
奈良県では、平成9年から県の事業として「小児科2次救急輪番体制」をとっている。県を北和と中南和の2つの地域に分け、小児科を掲げる16病院で当直を回す制度だ。
県の担当者は「県内のどこかで必ず診てくれるところがあるので、充実しているとまでは言えないが(態勢を)整えている方だと思う」と話す。 しかし、母親はこう訴える。
《119番で夜間の小児救急当番を尋ねても、「申し訳ないですが、かなりの待ち時間を覚悟してください…」とおっしゃるほど。長時間待ちが常態化しており、本当にひどい状態です》
以前の風で、小児の救急患者の多くが軽症だと紹介した。大阪府によると、95%以上が入院を要しない軽症患者といい、軽症の小児患者の搬送が夜間の小児救急を圧迫している側面は否めない。
母親は、最終的に診てもらった奈良の病院で、看護師から軽症の患者が多すぎて困るということ以外にこんなことも言われている。
《「今後、このような状態(40度以上の発熱や肺炎併発など)になったら救急車で来てくださいね」》
母親はこう訴える。
《素人の私に、その判断はつきません》
救急車の台数や救急隊員にも限りがある中で、本当に深刻な症状の子供を優先的に判断し、搬送するにはどうしたらいいのか。
厚生労働省は16年から、補助金事業として全国的に小児救急医療電話相談事業を始めた。休日、夜間の急な子供の病気に対応できるよう医師や看護師に電話で相談できるもので、鳥取や富山などを除くほとんどの県で、準夜帯(0時まで)をカバーする態勢が敷かれている。
同省の担当者は「親に安心を与える目的が一番ですが、軽症者の搬送数を減らしたいという期待も込めました」。
だが、軽症の患者の搬送は減るどころか増える一方なのだ。根本的な解決は無理なのだろうか。(信)
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小児救急医療電話相談の連絡先は「#8000」を押すと、各都道府県の窓口に自動転送される。携帯電話では対応していないところもある。
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