23年間、規則正しく続けた習慣を変えるのは至難の業だ。朝起きてから夜寝るまで、常に手の届くところに置いていた。たばこである。
この冬、風邪を引いたのを機に、初めて禁煙しようと考えた。外資系の喫茶店は全面禁煙。街を歩きながら吸うこともできない。家族からも煙たがられる。友人や先輩もたばこをやめている。禁煙を試みる状況は整っている。
禁煙外来のある病院に行った。呼気中の一酸化炭素濃度を測られ「比較的重度」のニコチン依存症と診断された。渡されたのはニコチンパッチ。体に張ってニコチンを取り入れ、禁煙による禁断症状を緩和するという。医師は「無理して一気にやめようと思わず、リラックスしたほうがいい」と優しくアドバイス。さっそく試した。
3日目まではパッチの効果で、たばこを我慢できた。「いけるかも」と思った気のゆるみか、翌日パッチを張り忘れた。夕方まではこらえたが、あえなく挫折。そして。禁断の1本のうまいこと! 意志の弱さを再確認しただけの4日間だった。【澤圭一郎】
毎日新聞 2008年2月4日 東京夕刊