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弁護士も「支給停止を」滝川タクシー代不正

2008年01月31日

■市の顧問 昨年5月 実態調査も促す
  ■市は支払いを続行

 生活保護を受けていた夫婦が滝川市から約2億4千万円に及ぶ介護タクシー代金を不正に受け取っていた事件で、同市が昨年5月、顧問弁護士から「あまりに非常識な額で、支給を打ち切らねばならない」「診断書を出した医師を問いただすべきだ。夫婦から不服申し立てがあれば争えばいい」と強く直言されていたことがわかった。しかし、市側は「書類上の不備はなく、道の監査も通っている」と抗弁。具体的な調査に手を付けることなく、それ以降も夫婦が逮捕される同年11月まで、総計で約7千万円を支払い続けた。

 この事件をめぐっては、田村弘市長ら市の最高幹部が、06年9月の時点で監査委員に問題を指摘されながら放置していたことが明らかになっている。常識的な市民感覚からは「市は一方的にだまされた被害者」という見方は到底成り立たず、批判はさらに強まりそうだ。

 滝川市の居林(いばやし)俊男・保健福祉部長によると、市側は07年5月下旬になって初めて、顧問弁護士の丸山健氏に相談した。当時は夫婦の請求額がエスカレートし、1カ月に1千万円以上が支払われていたといい、丸山弁護士は「市民感情からいえば、到底許せるものではない。役人が制度的に良いといっても、それは不相当だ」「金の振り込みをただちに切るべきだ」などと強く指摘したという。

 これに対し、居林部長は「書類上の不備はない」と難色を示した。07年1月に道が監査したことを持ち出し、「道に相談したが、現状で問題ないと言われた」と説明したという。

 夫婦が通っていた北海道大学病院などの担当医は、夫を重病と判断する一方、入院すること無く滝川から救急車仕様のタクシーで札幌まで通院すべきだとの見解を示したとされる。書類上、夫はほぼ毎日滝川から通い、1日に2往復したという請求もあった。

 丸山弁護士はこうした実態を踏まえ、北大病院の担当医らに対し、滝川〜札幌間の通院の必要性が本当にあるのか、具体的な根拠は何かなどをただすよう助言。さらに、早期に警察へ相談するよう勧めたという。

 市は6月1日になってようやく警察に相談したが、それでも支給を継続。警察へ被害届を提出した11月16日の当日になっても約390万円を支払っていた。

 居林部長は朝日新聞の取材に対し「夫婦に対して市が何らかの行動を起こせば、警察の捜査に支障が出るかもしれないと思った」「いま考えれば、ばかげた話だ。打ち切るべきだった」などと話した。

 一方、市がタクシー代金支給の「お墨付き」と位置づけている監査結果について、道の担当者は「生活保護の決定、実施はあくまで市の権限だ。今回の場合、夫婦の長距離の移送について一般的な相談はあったが、個別の問い合わせは受けていない」とし、全く異なる見解を示している。

   ◇

■第三者委発足 市民に懸念も

 介護タクシー代金の不正受給事件を検証する滝川市の「第三者委員会」が30日、発足した。3月末までに結論を出す方向だが、立場上、市当局と関係が深い委員が多い。市民には「懇意の人物を集め、役人の筋書き通りに文書をまとめるようなお決まりの『審議会行政』が繰り返されるのではないか」という懸念があり、市がうたう「市民の目線」の検証作業が行われるかどうか、注目される。第三者委の結論が出た後、田村弘市長は市長としての報告書を作成するとしている。

 第三者委のメンバーは次の通り。(敬称略)

 木下武徳(北星学園大准教授)▽木原政明(道警友会滝川支部長)▽田中寿蔵(市議OB会長)▽丹羽修身(市社会福祉協議会長)▽広部真行(弁護士)▽福田和義(市民生委員・児童委員連合協議会長)▽矢島敏克(市町内会連合会連絡協議会副会長)▽渡辺恭久(滝川商議所副会頭)

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