自然保護や環境問題を訴えながら暴力行為に及ぶ団体は近年、過激さを増している。7月に開催される北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)でも、環境破壊防止などを主張する反グローバリズム運動を掲げる団体の動向が、警備面で大きな懸念材料となっている。警視庁公安部の捜査は、シー・シェパード(SS)など過激な団体を牽制(けんせい)し、サミット本番での暴徒化抑止に向けた強い姿勢を示す狙いがある。
SSは「日本の調査捕鯨は形を変えた商業捕鯨」などと主張し、反捕鯨国の豪州やニュージーランドの一部で好意的に受け止められている。しかし、財団法人「日本鯨類研究所」は「鯨類捕獲調査は国際捕鯨取締条約に基づき実施している。執拗(しつよう)な妨害活動は危険なテロ行為だ」と批判。米連邦捜査局はSSを「エコテロリスト」と断じている。
首相官邸は近く、関係省庁の担当者を集め、SSへの対処や再発防止策を協議する方針だが、警察当局は「捕鯨の是非は議論があるが、警察にとっては妨害行為が違法かどうかが問題」(捜査幹部)とのスタンスだ。しかも国民の安全が脅かされたと認定できれば、「事件化をためらう理由はない」(同)と毅然(きぜん)とした対応を強調する。
また、公安部の捜査がサミットを見据えたものであるのも事実だ。昨年のドイツ・ハイリゲンダムサミットでは、経済のグローバル化が環境破壊を助長していると主張する反グローバリズム運動の一部が暴徒化し、大混乱した。「暴動の未然防止には、日本警察の断固たる姿勢を示す必要がある」(政府筋)という声は根強い。
反グローバリズム運動の活発化は「今の時代、政治イデオロギーより、自然、環境保護の主張の方が受け入れやすい」(警視庁幹部)との見方もある。国内外の多くのNGO、市民団体が参加し、大半の参加者は穏健だが、一部の過激な参加者に扇動され暴動が一気に拡大するケースも目立つ。このため、公安部は過激な参加者の動向を把握するため、各国からの情報収集も加速させている。
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