【石家荘(中国河北省)西岡省二、北京・浦松丈二】中国製冷凍ギョーザの中毒事件で、中国当局が日本メディアの大々的な報道に神経をとがらせている。報道ぶりが日本人の対中感情を左右するとの懸念が背景にあるようだ。一方、製造元「天洋食品」(中国河北省石家荘市)は、従業員や元職員らに「かん口令」を敷いた。従業員らの報道機関への証言を控えさせ、情報管理を徹底させる狙いがあるとみられる。
外国メディアの報道を紹介する中国紙「参考消息」は3日、中毒事件を初めて大きく伝えた。「ギョーザの生産に問題はなかった」との見出しを掲げ、日本の記事から中国側にダメージのない部分だけを抜き出して転載した。「問題なし」と強調するのは、事件鎮静化を狙ったものだ。
国家品質監督検査検疫総局の王大寧・輸出入食品安全局長は先月31日、「科学的で正確な結論が出るまでは、主観的な推測を対外的に発表しない」との方針で日本側と一致したと語った。日本政府に対し、推測記事の元になるような断片的情報をメディアに提供しないようクギを刺したものとみられる。
天洋食品の底夢路工場長も2日の会見で「調査結果を待ち、記者も慎重に報道すべきだ」と日本メディアに注文をつけたが、当局の意向に沿った発言なのは間違いない。
一方、天洋食品の西約600メートルにある同社従業員や元職員の住宅群の管理者は、毎日新聞に「天洋食品の工場から職員が来て『天洋のことは一切話すな』と指示を受けた。従業員らも同じことを言われた」と証言した。
従業員らは当初、同社で労働契約をめぐりトラブルが起きたことなどを日本メディアに証言していたが、次第に口は重くなり、「天洋食品について何も聞くな」(40歳前後の元従業員の女性)など、証言拒否が相次ぐようになっている。
中国では06年1月、崔天凱・外務省アジア局長(現駐日大使)が日本外務省高官に「日本も中国と同様に、メディアを指導してはどうか」と発言したことがある。日本の報道機関への強い警戒感とともに、当局が管理しきれない日本メディアへの戸惑いがある。
|